修羅 18 総つく
ったく、こいつを抱いた男は、いったいどれ位いるんだろうか?
いいや、こいつを抱いたんじゃねぇな、こいつに抱かれた男だな。
女の過去なんて、気にした事なんて無かった俺が、
身悶える程に、こいつの昔の男が気になるんだかんな。ったく‥よぉ‥
だが、ちぃっと待てよ。鈴也様の柊って‥ こいつ、俺とあの男を天秤にかけてたのかよ。はぁっー 大した女だよな。柊はよくコイツを手放せたよな?
「‥さん、総二郎さん、」家元夫人が俺に話しを振ってやがる。
なに言ってたんだか、全然わからねぇや。
目の前の女が小さく笑いやがる。ッチ,あの女‥ゼッテェー今日は寝かせねからな。
暢気に笑ってられんのも今のうちだと思いやがれ。
百瀬会長が
「知らぬ仲のお二人でもないでしょうから、儂等はここで失礼するとしますかな。つくしちゃん、この後は若宗匠にきちんと自宅まで送って頂くんじゃぞ。」
それぞれが迎えの車に乗り、戻って行く。
つくしと俺、2人残される。
「家帰る前に、どっか行きたいとこあっか?」
「うーーん。」
可愛い顔して、悩んでいやがる。
「行きたい所はないけれど、出来たら総と2人でブラブラ歩きながら帰りたいなぁー」
なんて、可愛い事を言いやがる。2人並んで手を繋ぐ。
「なぁ、この見合いの事、お前いつ知った?」
「っん?総が来てから知ったよ」
可笑しそうに笑ってやがる
「俺じゃなかったら、どうするとこだよ?」
「っん?断るよ」
「百瀬の会長と滋の親父前にして断れんのか?」
うーんとか、なんとか小首を傾げたあとに
「ねぇ、総はいつ知ったの?」
「見合いだと知ったのも、相手がお前だと知ったのも、あの部屋に通されてからだ。」
「じゃぁさ、あたしじゃなかったらどうしたの?」
んなもん、席蹴って帰んだろうよ‥
言葉に出す前に、つくしと目が合って
「ねっ、一緒だよ。ただあたしは、丁寧にお断りするけどね。しかも‥」
しかも‥の後は,クスクスクスクス 可愛らしく笑いやがる。
「お見合い話使って、総に嫉妬してもらっちゃおうかなぁ〜って思ってた。」
「なぁ、お前‥本当にあの鉄パン履いてた牧野つくしか?」
宇宙人が降り立って、牧野つくしの頭になんかチップでも埋め込んでいきやがったか?
「うーーーん。どうだろうね?」
美しく妖艶に、微笑みやがる。繋いでいた指先が一瞬離れ、俺の掌で弧を描く‥
「うふふっ、全部、全部、牧野つくしだよ。女の十年は変貌の十年なんだよ。」
ふわりっ、つくしから、微かに伽羅の香りが漂う。
「伽羅か?」
「伽羅だけじゃないよ。そんなに甘くないでしょ?」
料亭ではしていなかった香り。
「お食事の所では持たないよ、うふふっコレだよ」
そう言って、胸元から匂い袋を見せてくれる。
中には、伽羅に、かっ香、龍脳に、麝香をブレンドしたと言う。
「総の知ってる牧野つくしは、石鹸の匂いの牧野つくしでしょ?今のあたしは、この香りでしょ。」
確かに、こいつがいつも漂わせてる香りだ。
「あぁ、お前の匂いだ。」俺の答えに、目の前の女が妖艶に笑う。
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