その距離50センチ 10 あきつく
牧野は、ビックリしてアワワっしてて、気が付いちゃいないけど、お袋の瞳がクスリと笑ってる。
絶対に、絶対に姉妹結託して社則を作った‥筈だ。横を見ると婆ちゃんも満面の笑顔‥
って、事は3人で結託か。すげぇなぁ。我が親族ながら感嘆する。
婆ちゃんが、嬉しそうに
「じゃぁ、皆で乾杯しましょうかね」
グラスが重なる。鳩豆牧野も、その場に流され杯を重ねる。
やべっ、あいつ絶対に許容量を超えてる。
「牧野、もうそろそろ飲むの辞めた方が‥」
俺が、言葉を発した途端‥
双子が、ヤレヤレと言った風情で両手をあげながら首を振っている。
希美伯母さんが、牧野のグラスにシャンパーニュを注ぎながら
「月曜日から、美作勤務だからね」
そう念を押している。
「ふわぁーい」
言わんこっちゃない‥‥素敵な酔っ払いが出来上がっている。
「つくしちゃん、改めて入社のお祝いに、一揃え衣装やら靴もろもろ用意してあるからね」
お袋が嬉々としながら、牧野に話してる。
「はい、ありがとうございます」
敬礼しながら、御礼を言ってる。
憶えてないパターンだな。
まぁ、なんか物を送る時は、このパターンだときちんと貰ってくれるから良いんだけどな。
「さぁお姉様、お食事も終わった事ですし‥お姉様のお部屋でお話しましょう」
双子がそう言って、牧野を連れて行く。
牧野、お泊まり決定だな‥‥
お姉様のお部屋‥週3でバイトに来てた‥いや、夏休みとか長期の休みは、毎日の様に、美作邸に出入りしてた牧野。
良く泊まって行ったけな。
双子の「お姉様、お願いー」攻撃で。
で、出来上がった牧野部屋。
クロゼットの中には、お袋チョイスの牧野の洋服がぶら下がっている。
お袋にしては珍しくシンプルで上品な洋服達。
ふっ、そう言えば
「いつもいつも、お袋達、自分の趣味ばっかり押し付けて、ごめんな」
俺のセリフに
「ううん。夢子さん、凄く繊細に気を使って下さって、あたしの趣味のものばかりチョイスしてくれてるよ」
牧野が帰したセリフ。
そう言われて、改めて見て‥ お袋の事を尊敬した。
お袋が、婆ちゃんに気に入られ嫁にくるように懇願した気持ちが良くわかったんだっけかな。
牧野のお陰で、俺は色んな事に気付かされる‥
やるな、牧野。
* **
「おはよう〜美作さん朝ですよぉー」
愛しい牧野の声がする。うーーん、まだ夢の中か俺‥
って、飛び起きて、目を開けたら牧野。
「えへへっ、すっかりお世話になちゃった。それに、見て見て美作入社お祝いだって」
クルンと一回りして見せてくれる。
憂鬱な月曜の朝が、ハッピーに変わった瞬間だ。
牧野がいる、それだけで特別になるって改めて気が付いた。
こんな朝が、毎日訪れてくれたら幸せだなって感じた朝だった。
牧野を、嫁さんにしたいと心底思った朝だった。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事