その距離50センチ 11 あきつく
気怠い朝が活力に満ちた朝に変わって来る。
「美味しいか?」
「うん、とっても美味しいよ」
「あーん」
そう言いながら、ポトフを掬って食べさせてくれる。
ほかほかポトフが、心の中までほかほかを連れて来てくれる。
「本当だ」
「ねっ、美味しいでしょ」
二人でニッコリ笑って、頷き合う。
瞬間、視線を感じ振り向くと、ヨシヨシというように芽夢が頷いて、
牧野に見えないようにピースサインを送って来る。
‥俺?後ろ手で頭を掻くしかないよな。
朝食が、終わり2人で紅茶を飲んでいると、皆が集まって来る。
気を利かせて、2人にしてくれたんだろうけど‥
芽夢から聞いたのか、皆の顔が心なしか‥いや‥思いっきりにや付いている。
絵夢が
「うーん、このポトフ美味しいですわね」
そう言えば
「愛が詰まってますからね」
芽夢が返事する。
「そうですわね、お兄様もお姉様もお召し上がりになられました?」
「お腹の中でほかほかしてるよ」
牧野が、腹を撫でながら答えてる。
そんな仕草も可愛くて、バレないように見惚れる。
婆ちゃんも、親父もお袋も嬉しそうに笑ってる。
牧野が時計を見る。
「あっ、そろそろ‥出社します。本当にお世話になりました。」
そう言って、席を立とうとする。
婆ちゃんが
「今日から、私の秘書ですから一緒に出社ですよ」
そう笑って
「あきらも、半年程、私に付いて回って貰います」
ピシャリと言い切った。
ゲッ、婆ちゃんの洗礼か‥親父を見ると、うむっ と頷いている。
牧野が目を白黒させている。
「つくしちゃん、今日からあなたは私の直属の部下。秘書の仕事は希美さんの所で、叩き込まれてる筈だから大丈夫だと思うけど、それに、堤をあなたた達2人の教育係としてつけるから心配しないでね」
牧野に一つウィンクしてる。
「つくしちゃん、朝子お義母様のお傍で仕事出来るなんて、凄い事よ。とても勉強になるから、頑張ってね〜」
お袋が暢気に、凄ーい凄ーいを連発して手を叩いて喜んでる
暢気だな‥一瞬そう思ったけど‥
お袋も、婆ちゃんのもとで働いてたんだ。
お袋‥恐るべし‥
いつの間に、やって来たのか‥堤さんがスーツを2着もって立っている。
「つくしちゃん、あきら‥折角着替えている所なんなのだけど‥今日は挨拶回りがあるから、こちらに着替えて頂戴。夢子ちゃん、つくしちゃんのヘアーメイクを少し手直ししてあげてくれるかしら?」
婆ちゃんがテキパキと指示を出している‥
牧野も俺も、目まぐるしい展開の中、口をあんぐり開けていた。
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