その距離50センチ 12 あきつく
俺は、婆ちゃんに
「挨拶回りって、一体どういう事でしょうか?」
「あきらも、秋には美作商事本部長を任せようと思っているという事ですよ。不服ですか?」
「いや‥ありがとうございます‥ただ、まだ早い気がするのですが」
「あら、随分と大口契約を決めているそうじゃない?周りのものにも評判が良いのよ。遅い位じゃないかしら?」
「はぁっー」
牧野に会うのに、気合い入れたお陰ですとも言えず‥なんとも、曖昧な返事をしてしまい
「まぁ、どうせ、馬に人参、すぐるに夢ちゃん、あきらにつくしちゃんだろうけどね」
オホホッと嫌みな笑いも、ついて来る。
「専務への就任は、所帯を持ってからと言う事になるかしらね。頑張らないと一生、部長止まりなんて事もあったりしてね」
オホホッ
後ろで、聞いてた双子も、会わせてオホホッと笑い、オホホッの3重唱だ。
堤さんに、今日のスケジュールを教えて貰う。
びっちりと詰め込まれた、お宅訪問ならぬ、会社訪問、ランチMT、会社訪問、会食
堤さんの顔を見ると
「朝子会長に、お会いになられたいと言う方が沢山いらっしゃいまして‥」
それにしても、詰め過ぎだろ?の量だ。
これが、どうやら今週いっぱい続いて、来週は、関西に連れて行かれるらしい。って、出張か?
俺の視線を感じたのだろう。
関西出張の際には、別邸でお過ごし頂けますからと返事が帰ってくる。
美作の別邸を使用出来るのは、ゆくゆくは、美作商事だけではなく、MIMASAKAグループを引き継いで行く者のみと決まっている。
「‥‥それって?」
「そうなるかと思います。あきら様でしたら、順当ですし、誰にも反対されないかと‥ただし、ご伴侶様を得てからの正式発表になるかと思いますが」
堤の眼鏡の奥の目がキランっと光る。
俺の知らない所で、色々なものが動き出している‥
しかも、伴侶を得てからの但書を添えて。
MIMASAKAグループか‥正直、何の想像もつかねぇな。美作商事が、グループの中で中枢を担っているのは、百も承知しているが‥
MIMASAKAグループ全体となると「大変だな」それが正直な感想だ。
心身ともに、支えてくれる人間が必要になる。
で、それが親父には、お袋で。
俺には、牧野か。
そっかぁー 婆ちゃん、サンキュー‥違うな、親父にもお袋にも、双子にも サンキューだよな‥
扉が開いて、牧野がやって来る。
俺の格好は、ネイビーストライプのスーツに、ネイビーの小紋タイ
牧野の格好は、ネイビーのテラードジャケットのスーツの下に、カシュクールはネイビーの小紋柄
恥ずかしい程のペアルックだ‥しかもこの小紋柄には、ランダムに美作の家紋が‥
あははっ‥
笑うしか無い‥よなっ?
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事