その距離50センチ 14 あきつく
お袋の会社の新店舗を出すとか出さないとか‥
双子は、社会勉強だとか‥
別邸に帰ると、お袋と双子‥そして何故か親父もやって来ていて、美作の屋敷となんら変わりのない日常が繰り広げられている。
この2週間、牧野が傍にいるのが当たり前になった。
朝、目が覚めて階下に行くと、牧野がお茶を飲みながら俺を待っていてくれたり、庭を散歩していたり‥
牧野が居る。それが当たり前の光景になっていた。
関西での顔合わせも、全てが終了し‥帰りの車の中、牧野と二人きりになる。
連日連夜の疲れと、俺と2人きりの気安さからか、ものの数秒で夢の国に旅立っていった牧野。
俺の肩に凭れ掛かって来る。寝顔を見ながら
「牧野、家に帰んのかな?」
そんな独り言を呟いていた。
流石に、婆ちゃんの元で働くにしても、来週からは通常業務だもんな。 そりゃあ帰るよな‥
帰らないで欲しい。いっその事、うちの屋敷で暮らせば良い。
俺は、画策する。牧野が帰らないで良い理由を。
そして、気付く‥自分が姑息なことに。
俺との未来しか牧野が選べないよう、このまま、なし崩しにことを進ませようとしている自分に気が付く。
「流石に、ずるいよな?」
寝てる牧野に問うてみる。
気持ち良さげに寝る牧野を見ていたら‥いつの間にか‥俺も眠っていた。
* **
ふわりとフレグランスの良い香りがする。
あたしの大好きな人の香り‥彼のように、優しくて甘い香り。
目を開ける‥隣には、美作さん。珍しく眠っている姿のあたしの愛おしい人。
何時からだろう?美作さんを好きだと意識し出したのは‥
ついこの前のような気もするし、ずっと好きだったような気もする。
大熱を出して部屋で寝込んでいたあたしを、見つけてもらったあの日から、始まっていたのかもしれない。
熱で朦朧とした意識の中で感じた、この男(ひと)を愛してしまうかもしれないという思い。
あははっ、あの瞬間、もう愛し始めてたのかもしれない。
熱が下がり、体力が回復するのが寂しかった。
もう、美作の邸にいる理由がなくなってしまうから。
おじ様が、絵夢ちゃん芽夢ちゃんの家庭教師を提案してくれた時は、嬉しかった‥
週に2度、大手を振って美作さんの家に通えるから。
行くと必ず美作さんの姿を、探してた。
就職活動が始まって、はたと気が付いたのが‥
美作さんもジュニアなんだという事だった。
しかも‥あたしの元彼は、彼の親友。
おじ様も、美作さんも頻りに美作商事に来るように勧めてくれたけど‥
立場の違いをこれ以上感じたくなくて、何度もお断りしたんだっけ。
あたしは、思い出す。
夢子さんに連れられて、朝子さんと初めてお会いした日の事を。
ねぇ、美作さん‥ あたしね 猾いんだよ。
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