刹那 02 総つく
「送って行ってやるよ」
「いい、いい。また睨まれるし」
慌てて逃げようとする、牧野の首根っこを掴まえてメットを渡す。
もうだの、いいよ。だの言いながら、ちょこまかついて来る。
蹴躓いて転びそうになって、俺の手を掴んで来る。そんなんが嬉しくて堪らなかったりする。
大概、イカレポンチだな‥
バイクに跨がり、ケツに乗るように顎で指示を出す。
熟れた感じで俺の身体に抱きついて来る
最初に乗せた時、コーナーのたんびに、身体を反対側にそらしやがったんだよな。
家庭教師先の家の前に着く。メットを返しながら
「うーん、気持ちよかった。ありがとう」
「あぁ、明日の打ち合わせがあっから、終わったら電話しろ」
「あっ、うん」
俺は、俺の立場を精一杯利用する。我ながら姑息だ。
RRR
ディスプレイをみると、牧野の名前‥
明日の打ち合わせだと言いながら、夕飯に連れて行く。
大口開けて、美味しし美味しい食ってやがる。
所作が随分と綺麗になったのに、上手そうに食うよなぁ。
デザートが運ばれて来る。
牧野が、マチェドニアで、俺がアフォガード
「先にこっち食うか?」
アフォガードを渡すと、ニンマリ笑顔で
「ありがとう」
そう言いながら、エスプレッソをアイスにかける。
なぁ、知ってか? アフォガードの意味。溺れただぞ。
「美味しいぃ〜この苦さとバニラアイスの風味が似合うんだよねぇ」
飛っきりの笑顔で、うんちくなんぞ垂れやがる。
「一口くれ」
えぇーだ、なんだかんだ言いながら、スプーンで一口掬って食べさせてくれる。
その仕草が何だか色っぽく感じんのは、惚れた弱味ってやつだけじゃねぇよな、
「もう一口」
口を開けて催促する。
バニラの甘さに、エスプレッソの苦さが妙に合う。
冷たいのに、熱い。
なぁ、俺等みたいじゃねぇか?
喉元まで出かかって、慌てて押し込める。
まだ、時期尚早だ。じわりじわり、俺はお前を囲い込む。
逃げれねぇように‥
全て平らげた牧野が満足げに微笑んで
「ご馳走さまでした」
両手を合わせて、小さく呟いてやがる。
一つ一つの仕草が可愛いくて、口元が綻ぶ。
「っん?どうした?またエロ思い出してたの?」
チロリと見てきやがる。
「勤労処女には、わかんねぇー世界だよ」
「エロ門、勤労処女言うなー」
唇を尖らせて怒ってる。
なぁ、目の前で、ひょっとこみたいな顔してやがるお前の事ばっかり考えてんだって俺が言ったら、お前どうするよ?
ククッ 俺が笑えば、牧野も一緒になって笑う。束の間感じる幸せの時間。
「ふぅ〜っ、お腹いっぱい。いつもありがとうございます」
「おっ、つくしちゃん随分、しおらしいじゃんか」
「もぅ、つくしちゃん言うな」
「じゃぁ、つくし?」
「はっ?それって随分偉そうじゃん。今は同級生だよ?ねっ、総二郎くん」
勝ち誇ったような顔をして言いやがる
「光栄だと思え、つくし」
この日から、俺は牧野をつくしと呼ぶようになった。
何のため? つくしを狙う男共への牽制だ。
いつも一緒に居て、下の名前で呼ばれる。
充分、意味深に見えんだろう?
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