刹那 03 総つく
「つくし、そっちじゃねぇこっちだ」
和尚の前で、つくしを連呼する。
和尚は、ニヤリと笑いながら
「ほほぉっー若宗匠も、ホホッホホ、誠に結構、結構」
和尚は、つくしが大のお気に入りだ。
つくしを連れて来るとニコニコ笑ってやがる。
和尚、いざと言う時の、力になってくれんだろう。
ってか、なってもらうように、毎回つくしを連れてきてんだ。
「海雲和尚、それ違いますよ、これはね‥こうやって」
今日は、スマホの指導かよ。和尚もあれやこれや頼むよな。
で、次回は和尚の奥方と買い物の付き合いか。
ったく、見事な程に人脈を広げてってるんだからなぁー、恐れ入るよ。
「お、つくし、そっちの寄越せ」
「もう、つくし、つくしすっかり呼捨てじゃん」
「悔しかったらお前も呼び捨てすりゃぁ良いだろうよ」
「西門!あっ、ダメダメこれじゃ家元とかも呼び捨てになっちゃうじゃん」
眉間にしわ寄せながら難しい顔をして
「総二郎?うーん二郎?うーーん?総‥うんうん」
「総、そっちの頂戴」
ニヤリと笑いながら、俺に話しかけてくる。
なぁ、つくし‥お前が、引っかかってんだぞ?
お前が,『総』と呼ぶ度に、俺の胸に木蓮の薫りが立ちこめる。
甘い薫りが立ちこめる。甘美な想いと共に。
『総』『つくし』この2つの呼び名が、
どんだけ周りに影響を与えるなんてこと、お前考えた事なかっただろ?
しかも、重要筋との付き合いだかんな。
蜘蛛の巣に絡めとられるように、俺の手中に絡めとられるつくし。
一つ一つは、点でしかねぇが、点が繋がれば線になんだぞ。お前、覚悟しってか?
フッ、お前の中に覚悟なんてもんは、一ミリたりともねぇんだろうな。
今は、なんも気が付くな。
俺がお前を手に入れる。そん時にお前は気が付くんだ。
だがよぉ、気が付いた時には、もう逃げれねぇからな 覚悟しろよ。
刹那‥お前が振り向いた。花咲く笑顔で振り向いて
「あっ、はい」
手渡してきたのは、鈴だった。
チリチリ、チリリーン
「厄よけだって、こっちが総の分」
俺とお揃いの鈴の音を響かせながら、ニコリと笑う。
チリリーン 鈴の音がする。
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