刹那 05 総つく
俺の指を掴みながら,真剣に叱るつくしを見ていたら‥
木蓮の木の下で、昼寝をしていた妖精を思い出した。
木蓮の妖精‥小さな頃に見た妖精。
小さな妖精は、寂しかった俺の唯一の友達だった。
アイツ等に会うまでの、ただ一人の友達。
俺は思い出す。
あの日の風景を‥西門の木蓮の木の下で、うとうとと、眠っていたルタのことを。
**
いつでも兄貴が一番の中で生きてきた。
優しくて大好きだった兄貴。
だけど‥俺にとって憎しみの対象でもあった兄貴‥
西門の跡継ぎとして、両親や祖父母の期待を一心に集めていた兄貴。
茶の稽古を本格的にやり出して、俺と一緒に過ごす時間が減った頃だった。
つまらぬことで叱られた。兄貴は忙しくて俺と遊んでくれない、全てがつまらない日だった。
「ととさまも かかさまも、ににさま‥きらいだ」
庭の石を蹴っ飛ばした。
「あっ‥イタッ」
えっ、だれ?そう思って、恐る、恐る近づいた。
そこにいたのは、寝ぼけ眼した俺より小さな奴だった。
「オレ、そうじろう おまえのなまえは」
「あまえ‥?」
「あぁ、なまえ」
「ルタ」
「ふ〜ん、ルタかぁ、おまえここで なにやってんだよ」
「ねんねちてた」
「ふ〜ん、一緒に遊ぶか?」
「うん」
ルタと、一緒に遊んで、一緒に笑った。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、ルタと遊んだ。
一番始めに出来た友達だった。
木蓮の木の下に迎えに行くと、ルタはいつも眠っていた。
鼻をつまんで、ルタを起す。
2人で遊ぶ。俺の宝物も教えてやった。
ルタの宝物も教えて貰った。
毎日が楽しかった。
木蓮の銀色に包まれた蕾が、春の陽射しの訪れと共に一斉に咲き出した日
「そう、みちぇ きれいだね」
「うん。きれいだね」
ルタと2人で木を見上げた。
花が咲いて何日目だったのだろう?
風もないのに、たくさんの花びらが、パラパラと音をたて一斉に空から降ってきた‥
うわっ凄い ルタに声をかけた
刹那‥
俺の前から姿を消していた。
あの日から、ルタとは会っていない。
俺の初めての友達
次の日、あいつらと友達になった。
* *
「総、総、もう‥ぼぉーっとしない」
俺の指先を掴んだまま、つくしが俺の名を呼ぶ。
つくしを見つめる‥ 目が合う。
「あっ」
そう声を小さく上げて、手を離す。
「ゴメン‥」
「つくしちゃん。俺はいつでも構わないぜ」
俺は、軽口を叩く。つくしと気まずくならないよ
「ないよー!もう」
プクゥ〜っと頬を膨らませながら、つくしが怒る。
このまま、抱き締めて俺のものにしてしまいたい。
だが、全てを整え俺の手中に掴む日が来るまでは、この関係を続けよう
「プッ,俺もお子ちゃまはゴメンだ」
「あっ、ったく、もうー、総の尊敬出来る所は、本当に茶道だけだね」
「おっ、サンキュー」
あっ、褒めてないとかなんとか 言いながら、笑ってやがる、俺の愛おしい女。
お前を渡しはしねぇ。 類にも、司にも,他の誰にも‥
お前は、おれの女だ。
車に乗り込み、帰路につく。
車の揺れと戦いながらも、撃沈して眠るくしの肩を抱き寄せて、目を閉じる
チリーン 鈴の音がして
木蓮の甘い薫りが漂った気がした。
つくしの寝息が、甘い吐息に聞こえる。
「ったく、俺も焼きが回ったな」
小さな声で、呟く。
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木蓮の木の下で、昼寝をしていた妖精を思い出した。
木蓮の妖精‥小さな頃に見た妖精。
小さな妖精は、寂しかった俺の唯一の友達だった。
アイツ等に会うまでの、ただ一人の友達。
俺は思い出す。
あの日の風景を‥西門の木蓮の木の下で、うとうとと、眠っていたルタのことを。
**
いつでも兄貴が一番の中で生きてきた。
優しくて大好きだった兄貴。
だけど‥俺にとって憎しみの対象でもあった兄貴‥
西門の跡継ぎとして、両親や祖父母の期待を一心に集めていた兄貴。
茶の稽古を本格的にやり出して、俺と一緒に過ごす時間が減った頃だった。
つまらぬことで叱られた。兄貴は忙しくて俺と遊んでくれない、全てがつまらない日だった。
「ととさまも かかさまも、ににさま‥きらいだ」
庭の石を蹴っ飛ばした。
「あっ‥イタッ」
えっ、だれ?そう思って、恐る、恐る近づいた。
そこにいたのは、寝ぼけ眼した俺より小さな奴だった。
「オレ、そうじろう おまえのなまえは」
「あまえ‥?」
「あぁ、なまえ」
「ルタ」
「ふ〜ん、ルタかぁ、おまえここで なにやってんだよ」
「ねんねちてた」
「ふ〜ん、一緒に遊ぶか?」
「うん」
ルタと、一緒に遊んで、一緒に笑った。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、ルタと遊んだ。
一番始めに出来た友達だった。
木蓮の木の下に迎えに行くと、ルタはいつも眠っていた。
鼻をつまんで、ルタを起す。
2人で遊ぶ。俺の宝物も教えてやった。
ルタの宝物も教えて貰った。
毎日が楽しかった。
木蓮の銀色に包まれた蕾が、春の陽射しの訪れと共に一斉に咲き出した日
「そう、みちぇ きれいだね」
「うん。きれいだね」
ルタと2人で木を見上げた。
花が咲いて何日目だったのだろう?
風もないのに、たくさんの花びらが、パラパラと音をたて一斉に空から降ってきた‥
うわっ凄い ルタに声をかけた
刹那‥
俺の前から姿を消していた。
あの日から、ルタとは会っていない。
俺の初めての友達
次の日、あいつらと友達になった。
* *
「総、総、もう‥ぼぉーっとしない」
俺の指先を掴んだまま、つくしが俺の名を呼ぶ。
つくしを見つめる‥ 目が合う。
「あっ」
そう声を小さく上げて、手を離す。
「ゴメン‥」
「つくしちゃん。俺はいつでも構わないぜ」
俺は、軽口を叩く。つくしと気まずくならないよ
「ないよー!もう」
プクゥ〜っと頬を膨らませながら、つくしが怒る。
このまま、抱き締めて俺のものにしてしまいたい。
だが、全てを整え俺の手中に掴む日が来るまでは、この関係を続けよう
「プッ,俺もお子ちゃまはゴメンだ」
「あっ、ったく、もうー、総の尊敬出来る所は、本当に茶道だけだね」
「おっ、サンキュー」
あっ、褒めてないとかなんとか 言いながら、笑ってやがる、俺の愛おしい女。
お前を渡しはしねぇ。 類にも、司にも,他の誰にも‥
お前は、おれの女だ。
車に乗り込み、帰路につく。
車の揺れと戦いながらも、撃沈して眠るくしの肩を抱き寄せて、目を閉じる
チリーン 鈴の音がして
木蓮の甘い薫りが漂った気がした。
つくしの寝息が、甘い吐息に聞こえる。
「ったく、俺も焼きが回ったな」
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