刹那 06 総つく
嬉しそうに満面な笑いながら、俺を手招きする。
「あぁ」
あきらと滋、桜子、つくしと共に、類を待つ。
片手を上げながら、類が近づいて来る。
ふわりっ、類がつくしを抱き締める。
「牧野—元気だった」
「うん。類は元気そうだね」
相変わらずつくししか、見ていない、いいや、見えない類が居る。
「類君、あたし達も居るんですけど」
「滋さん、花沢さんにそんな事おしゃっても無理ですわ」
あきらと俺は、苦笑する。
6人で,連れ立って類の屋敷に向う。
車中も、類はつくしにベッタリだ。俺らの事は蚊帳の外。
相変わらずの武家屋敷。相変わらずの殺風景な部屋。
昔と違うのは、カウチが置かれた事くらい。
「カウチが増えてる」
「うん。牧野がいつ昼寝してもいいようにね」
「ぷっ、なにそれ」
「いつでもお出でって意味だよ」
2人で目を見合わせて笑い合っている。
ケッ気に喰わねぇ‥
類を見ると、チラッと俺を見ながらニヤリ笑う。
グッ、益々気に入らねぇ
時計は3時を指している。
俺の反撃だ
「つくし、そろそろ行くぞ」
「牧野、久しぶりだからご飯食べに行こうよ」
俺と類の言葉が被る。
つくしが時計を見て
「類、ごめんね。これからお茶会の打ち合わせなんだ。改めてまた来るね」
「ふーん。総二郎も無粋な事するね」
悔しそうに、唇を噛んでいる。
「悪りぃな、」
あぁ、そうさ態と今日の日に、茶会の打ち合わせを入れたんだ。
ふっ、何とでも言え、頭は生きている内に使わなければ意味がねぇからな。
つくしは、類に向って微笑みながら
「じゃ、また遊びに来るね」
かぁっー、そんな笑顔を向けるんじゃねぇ。
迎えの車の中でつくしが他愛も無いことを話す。
「総、なんか機嫌悪い?」
「別に悪くねぇよ」
餓鬼みてえに、類に嫉妬する。
我ながら情けない程に、この女が欲しい。
少し待っててね、そう言いながら裏に消えていく。
他のものと会話をしながら、つくしを待つ。
15分程で、着物に着替えたつくしがやって来る。
「事務局長が、今日は着物を着ていけって」
自然と笑みが出る。
訪問着に身を包んだつくしは、すげぇ綺麗だ。
「っん?何か変だった?」
「あっ、いや‥」
怪訝な顔で、つくしが俺を見て
「なんだか、今日は総変だよ?あ、今は若宗匠だったね」
小さく舌をだして、はにかんでやがる。
抱き締めそうになって、慌てて手をひく。
ニタリと笑う、事務局長の佐川と目が合う。
「牧野さん、それでは呉々も粗相の無いように、若宗匠のフォローをお願い致しますよ」
「あっ、はい。承りました」
つくしが微笑む。
チリーン どこかで鈴の音が聞こえた。
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