刹那 12 総つく
どこかで鈴がなる。
「いいのかなぁ」
困った顔で、つくしが聞いてくる。
「いいも悪りぃも、東雲夫人に、突っ返したら大変な事になんぞ」
「あっ、う、うん‥そ、そうだよね‥宜しくお願いします」
「おぉ」
東雲夫人に感謝する。多分‥こうなる事を予想して、送ってきたんだな。
しかも‥東雲の家紋入りときたもんだ。
そりゃ、家元夫人も母屋に置けと言うだろうよ。
母屋に入る機会が増えれば‥
周りは、俺とつくしの仲を勘ぐり、誤解する‥
いい加減、俺も小せぇ男だな、
もっとガツンといきゃぁ良いんだけど‥
もしも‥振られたら?何てことを考えちまうと、それも出来ねぇな。
それも俺ってことだ。
その代わり、周りからジワリジワリと追いつめる。
地引き網ってとこか? 網をかければ、あとは一気に引っ張るだけだ。
使用人に言って,母屋に運ばせた着物を、たとう紙に包み入れて、着物箪笥に仕舞っていく。
枚数があるせいか、中々の重労働だ。
「ちょっと宜しいかしら?」
家元夫人から声がかかる‥
「はい」
すぅーーーーっと 襖が開き、
たとう紙に包まれた着物をもった家元夫人と家元が立っていた。
「こちらの分が牧野さん、で、こちらの分が総二郎さん」
ドサッと床に置かれる着物達‥
「大きな茶会で着て、可笑しくない着物です。丁度総二郎さんと牧野さんくらいの年代に着たものだから、これもこちらに仕舞っておいて頂戴」
驚いて、お袋を見ると‥
「牧野さんには、この前お話したでしょ?」
意味不明な事を言いながら、小さく笑みを浮かべている。
つくしを見ると、ニッコリ笑って
「‥では、こちらの焦香色のお着物がですか?」
「えぇ‥そうよ‥うふふっ、また日の目を見させてあげて頂戴」
「宜しいんですか?」
「あら、響子ちゃんのお着物だけ頂いて、私達の着物は貰えない‥なんて、それはなくてよ」
そんな会話を続けている。
「片付いたら、リビングの方に、お茶を用意してますから、いらっしゃい」
そう言って、二人で去って行った。
「なぁ、つくしお前‥家元夫人と‥」
「総、母屋では家元夫人じゃないでしょ‥」
んな事は、どうでも良いんだけどよ
「あっ、悪りぃ」
思わず謝って
「‥お袋と、つくしって‥どういう関係だ?」
そう問うていた。
「あははっ‥うーーん、話すと長くなっちゃうんで、後にして、先ずは片付けちゃわない?」
至極、真っ当な事を口に出されて‥残りの着物を、箪笥に入れていく。
全て入れ終わったのを確認して、リビングに向う廊下で‥
「あのね、詳細はまた今度話すけど‥うんと、偶然ね、あははっ偶然ね、家元夫人とはお知り合いだったのよ」
「知り合いだった?」
「‥まだ総のお母さんだと知らない頃からの、知り合い‥というか‥うーん何と言うか‥なの‥」
チリーン
目の前の女は、謎ばかりだ
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥

にほんブログ村

♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥