刹那 13 総つく
いつもの癖で、ダメだししてやがる。
「総、お醤油とって」
「総、明日はどうする?」
つくしは、てんで気が付かずに総のオンパレード。
親父もお袋も、素知らぬ振りしながら、聞き耳立ててやがる。
仕舞には
「もう、総、ちゃんと聞いてる?」
と、来たもんだ。
「あぁ、聞いてんぞ」
ついでに親父もお袋もな。
「うーん、美味しいね。あっ、美味しいと言えば、先週行った、中華も美味しかったよね」
「だな」
「来週は、どこにするか決まった?」
お袋も親父も間違いなく、勘違いしてんだろうなぁー
まぁ、勘違いすんなら勘違いして貰った方が、こっちにとって好都合だけどな。
「つくしは、どこが良いんだよ」
「うーん、海老フライが食べたいかなぁーと」
「じゃぁ、キジマにするか?」
「うん。あそこの海老がプリプリで美味しいもんね~、あっ、今回は、あたしの奢りだからね」
「‥わかったよ」
「絶対だからね。そんなこと言って騙さないでよ」
って、奢ってやって騙すも何もねぇだろうよ?
親父もお袋も、心なしか肩が笑ってる気がするのは気のせいか?
つくしと飯を食うのは、美味い。何を食っても、間違いなく美味い。
あんまり美味くないものだって、美味くなっちまうから不思議だよな。
「ねぇねぇ、帰りにマロウも寄っていい?」
「あぁ」
「ほら、限定のカップ‥これで全種類揃うよ」
ニコニコ笑って、嬉し気に話す。マジ可愛いな。
つくしをこんなに、愛しちまうなんて思いもしなかったよな。
更が初恋ならば、つくしへの思いは、本気の愛だな。
つくしにとっての俺は何になんだろうな?
願わくば、こいつにとっての最後の男になりてぇと思う。
チリーン
どこからか鈴の音がする。
俺のでも、つくしのでもない 鈴の音。
「‥あっ、鈴の音‥」
つくしも気が付いたのだろう、鈴の音に‥
小首を傾げながら、音の源を探している。
刹那‥
つくしの背に、羽根が見えて、金粉が舞う。
綺麗だ‥
思った次の瞬間、羽根も金粉も消えている。
「っん?どうしたの?」
質問されて、まさかお前の背中に羽根が見えて、金粉が舞っていたとも言えず‥
「あぁ、鈴の音も色々あんだなって思ってよ」
「うん。本当だね」
反則の笑顔で、つくしが笑う。
チリーン
なぁ、つくし 知ってか?
木蓮の蕾は必ず北を向くって。必ずだ。必ず。
蕾に、太陽の光を沢山沢山あてて、花を大きくする為に、木蓮の蕾の先端は北を向く。大きな花になる為に。
別名、コンパスフラワーって、言われてんだってよ。
俺は、お前を見つめる。ついつい見つめちまう。
これは、なんて言うんだろうな?
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