刹那 15 総つく
夢を見る。幸せな幸せな夢を見る。
「つくち、げんきだった?」
「ルタ‥うん。元気だったよ。ルタは元気だった?」
「うん」
ルタに出会えたのが嬉しくて、ルタをギュゥッーと抱きしめる。
「ルタ‥会いたかった‥」
ルタがニコニコと笑う。サラサラの黒髪をなびかせて。
小首を傾げる度に、ルタの髪の毛が、サラサラと揺れる。
そっかぁ、ルタは総に似てるんだ。
そっかぁ、総は、木蓮の妖精なんだ。
美しい男は、美しい花から生まれたんだ。
そっかぁ‥そんな想像にあたしは、嬉しくなる。
チリーン 鈴が鳴る。
「うーーーーん」
目が覚める‥ 飲み過ぎた頭は、ちょっぴり重い。
だけど‥幸せな夢を見て、目が覚める。
ルタの夢を見た時は、目覚めた後も、心の中に幸せが広がっている。
温かな温かなものが、広がっている。
あたしは、幸せに微睡みながら、薄く目を開ける‥
次の瞬間‥雄叫びをあげていた
ギャッ ギョッ キャァッ
総が、美しい眉を顰めながら
「お前、うるさ過ぎ‥」
「だ、だ、だって‥な、な、なんで‥こ、こ、ここに?」
「西門の屋敷‥って、それは解るよな」
コクン コクン と、目の前の女が頷く。
「お前、酔っぱらって寝ちまったの解るか?」
コクン コクン と、またまた頷く。
「で、今がある。以上‥」
「えっ‥それじゃわかんないかも‥」
ぷっ、そりゃそうだ。
おでこにキスを落とした俺を、ガシッと捕まえて抱きしめてきたんだから。
嬉しそうに、抱きしめてきたんだから。
刹那
こいつが誘ってる‥勘違いしちまった。
つくしの口から
「‥会いたかった‥」
そんな言葉を聞かなきゃ俺は、こいつを抱きしめてただろう‥
会いたかった‥ 嬉しそうに微笑んだお前は、とても綺麗で‥
壊してしまいたい程に綺麗だった。
なぁ、夢の中で誰に会ったんだ?
なぁ、まだ忘れられねぇか?
悶々と、俺がそんな事を考えてたなんて、お前は露程も知らねぇだろうな。
聞きたいけど、聞けねぇよな。聞いたら最後、俺の気持ちは溢れていくだろう。
間違いなく、溢れて行く。
俺が求めたら、お前はどうする? なぁ‥‥
全てを隠して、俺は戯ける
「総〜離さないでーーって言って、抱きついてきたんだよ」
「えっ」
「ククッ、そりゃ大袈裟か‥」
「もうっ」
「でも、離さなかったのは、つくしちゃんだぞ‥」
ククッ笑って‥総が言う。
「朝まで俺と過ごす女なんて、お前ぐれぇだぞ‥しかもなんもなしでな」
総の言葉にグサッときて、あたしは
はぁっー 一晩一緒に居ても、何にもないなんて
総にとって‥あたしは、やっぱり‥ただの友達なんだろうな。
夢見ちゃいけない‥‥ あたしは自分に言い聞かせる。
チリーン
どこか、哀しく鈴の音が鳴る。
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