狂熱 01 総つく

狂熱　01 総つく

2016/ 06/ 19 (Sun) 12:00

総つくコラボ

苦しいと、あたしの心が叫んでる。
再び出逢ってしまったあの日から。

苦しくて、苦しくてたまらない思いを胸に隠して、
あたしは男に会うために、バーに向かう。

蓮っ葉な女を気取る‥
あなたに、気兼ねなく会うために。
慣れないお酒を煽り、男を侍らしながら、あなたを待つ。
男は、あなただけじゃないのよと。
あたしは嘯うそぶきながら。

ホラッ、もうじき愛しいあなたがやってくる。
あなたが来ると、すぐ解る。
辺り一面に光が舞い落ちるから。どこにいても、悔しい程に目立つ男。

あたしの心も身体も骨抜きだ。
それがバレないように、あたしは男を侍らしている。

恋をしている？
恋？そんなに生易しい感情なんかじゃない。
これは、狂熱‥‥
　狂おしい程の激しい激しい思い。

自分の中に、こんなに激しい欲情があったなんて
知らなかった。
あなたにあって、あたしの中の女が、欲望が、全てが花開いた。

男が笑いかける。
花に群がる蝶のように、あたしはヒラヒラとあなたの傍に飛んで行く。
甘い甘い蜜の香りが、あたしを狂わせる。

抱きしめられて、全てを忘れ、欲望の塊になる。
総が、他の女を抱けないように、あらん限りの精を貪る。

全てが愛おしくて、全てを自分のものにしたくて、あたしは、むしゃぶりつく。

淫らな音が、部屋の中に響き渡っている。

ん‥‥　ジュルッ‥ジュルルッ

「‥うっ‥つ、つ、つくし‥そ、それ‥気持ちよ過ぎ‥」

顔を見上げて、あたしはクスリと笑う。
「まだ、逝かないでよ‥」

はち切れそうな男の股間に股がり、腰を振る。
「‥ぁっあっん‥あっ‥あぁーーん‥ぅっう‥うーん」
髪を振り乱し腰をふる。

快楽を貪り尽くそうと、あたしの中が蠢うごめいている。

白い裸体が月に光り、ビクンビクンと跳ね上がる。あらん限りの痴態を尽くし、快楽を貪る。

アイシテル　アイシテル　アイシテル
あらん限りの思いを込めて、男を貪り続ける。

頭の中を、閃光が走リ抜けていく‥‥

心地よい気怠さの中、総の胸に抱かれて、夢の中をしばし微睡む。
総が目覚める前に、ベッドから抜け出して、服を着る。
美しい額に、口づけを落とす。

アイシテル　アイシテル　アイシテル
抱かれたばかりなのに、貪りつくした、ばかりなのに、劣情が襲ってくる。

「淫乱だな‥」
一人呟いて、可笑しくなってクスリと笑う。

バタンッ
ドアの音だけ残して、部屋を出た。

夜風が、あたしの火照った身体を冷ましていく。
夜空を見上げ、星を数える。数えきれない星を、数えようとして、空を見上げる。
見上げた瞳から、雫が一粒溢れる。

あたしは首をふり、現実に立ち戻り家路を急ぐ。

シャー　シャー
勢いよくお湯を流して、総の匂いを消しさっていく。
シャボンを泡立て全身を洗う。

紅い花びらが残る素肌にふれながら、シャツを羽織る。

ガチャッ
冷蔵庫の中から、炭酸水を取り出して口に含んだら、シュワシュワと口の中を炭酸水が駆け巡っていく。

同時に、シュワシュワと心の中も炭酸水が駆け巡る。

日常のあたしに戻るため‥
挑発的なカラーから、ネーディなカラーのネイルに塗り替えるんだ。

ネイルを乾かしながらあたしは思う。
あたしの恋は、なんでこうも上手くいかないのだろう？
元はと言えば、初恋相手が悪い？
うふふっ、類から久しぶりに届いたエアーメイルを眺めながら、そんなことを考える。

じゃぁ、道明寺？　ううん、違う。

じゃぁ、啓介？　それも違う‥

じゃぁ‥　今までに付き合った男を思い出す。

まぁ、あたしだって、それなりに大人の女だ。
色々な恋をしてきた。
あたしの恋は、いつもタイミングが悪いんだ。
お互いにお互いを求めるタイミングが。

分岐点は幾つもあった。
幸せを、選ぶことだって可能だったんだろう。
だけど...あたしが選んだのは、自分に忠実に生きる事だった。

正しいかどうかはわからない。
だけど‥間違ってはいなかったと言い切れる。

寂しいけれど、総に再び出会うことが出来たから。
間違っていなかったと言い切れる。

「あははっ」
渇いた笑いが谺する。

あたしの今の願いは、たった一つだけ...総が欲しい。ただ、それだけだ。
束の間の愛でも構わないから、総に抱かれたい。

だから、あたしは、嘘を吐く。
男はあんただけじゃないと、嘘を吐く。
あんたとあたしは、友達にすぎないと、嘘を吐く。

炭酸水が、シュワシュワとあたしの喉元を駆け抜けた。

ベッドに潜り込み目を瞑り、深い深い眠りに落ちて行く。

哀しみを心に抱えて。

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