刹那 19 総つく
この人の力になりたいと、自然に感じさせてくれる。
等身大の 総は‥あたしの好きな人‥
少し意地悪で、我がままで‥なのに、優しくて‥,
お茶の世界に身を置けば置く程に、あたしでは身分違いも甚だしいのだと実感する。
彼を支えていけるのは、きちんとしたお家のお嬢様なんだと思う。
「あたし‥耐えられるかな?」
小さく小さく呟いた。
「っん?どうした?」
「ううん‥なんでもないよ‥」
あたしは、閉じ込める。あたしの思いを閉じ込める。
総を愛するのと同じくらい、西門総二郎 を 愛しているから。
あたしは、閉じ込める。あたしの思いを。
withつくしのメンバーの方達は、
将来確実に、若宗匠の力になって下さる方達だろう。
若宗匠の才能を信じ、心から応援して下さる方達だ。
あたしの愛する西門総二郎を、一流と呼ばれる茶人にするのが、
あたしの仕事で、あたしの夢だ。
一生を掛けた仕事だと思っている。
幸せと、不幸せをあたしは、噛み締める。
フルフルと首をふる。別に構わないと首をふる。
女としての幸せよりも、もっと大きな幸せを求めようと。
西門総二郎を見守り、育てて行く幸せを。
お道具を仕舞いながら、総を見つめる。
”あっ、羽根‥”
総の背には、羽根がある‥
刹那、見える羽根がある。
誰にも言わない。あたしだけの秘密。
木蓮の妖精は信じてくれたけど
羽根を見たなんて言ったら、馬鹿にされるに決まってる。
うーん クワバラ クワバラ‥
「ふっ、さっきからお前どうした?」
「っん?なんでもないよ‥」
「なんでもない面じゃないだろうよ?」
「ゆ、湯煙ツアー‥について考えてたの‥どこがいいかなぁーって」
「お前は、どこ行きたいよ?」
「総は?」
冬に遠出して見に行った、あの海がもう一度みたいと思った。
かじかんだ手を握ってくれたあの海を、もう一度見たいと思った。
「「伊豆‥」」
2人で顔を見合わせる。
総も同じ事を考えていたのかな?
そんな事を思ったら嬉しくなって、自然と笑みがこぼれる。
二人声を合わせて、同じ場所を思い浮かべたのが嬉しくなった。
刹那
つくしの周りに、金の粉が舞い、背中に羽根が広がる。
「羽根‥」
思わず声に出していた‥
「えっ?」
つくしが小首を傾げて聞き返す。その様があまりにも可愛くて
「お前の背中に羽根が生えてる‥」
そう答えていた。
笑われる‥そう思ったのに‥
「えっ‥羽根は、総の背中に生えてるよ‥」
そんな言葉を返してくる。
2人で、顔を見合わせて、自分の背中を確かめて‥そろって首を傾げていた。
「本当だよ‥総の背中には羽根が生えてるんだよ‥」
「俺だって、本当だ。つくしの背中には羽根が生えてるんだ」
刹那 見つめ合う‥
もしかしたら、つくしは、俺の事を愛しているのかもしれない‥
都合のよい夢を見る。
チリリーン 楽しそうに鈴が鳴る。
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