刹那 22 総つく

「うわぁっ」
よろけて転けそうになるつくしを、抱きとめる。
で、何故か‥‥俺が負傷。

「‥痛っ‥」

「えっ‥総、だ、大丈夫？」

負傷と言っても、ほんの少し捻ったくらいだ。

つくしが平謝りに謝ってくるのを見ていたら
ムクムクと、とある企みが頭に浮かんでくる。


ククッ、このチャンス逃してなるものか‥


大袈裟に痛がって、つくしに車を呼んで貰う。

「総、本当にごめんね‥」
「あぁ大丈夫だから、気にすんな‥　痛っ」

あぁー大丈夫‥そう言いながら、つくし駆け寄ってきて、肩を貸してくる。


さぁ、俺‥頑張れよ


痛みもなにもすっかり収まってるんだが‥わざと顔を顰める‥
「もうじきお屋敷につけど‥誰か呼んでくるね？」

「いや、大袈裟にしたくねぇ、つくしが肩を貸してくれりゃ‥それでいい」

コクンと素直に頷いて、裏口に車を回してもらうように指示を出している。

運転手の木津が
「総二郎様、私が肩をお貸ししましょうか？」
そう聞いてくるので、つくしに見つからないように片手をあげる‥

木津がニヤリと笑っている。
「それでは、家元夫人にお帰りの旨だけ伝えて参ります。」



車の扉が開かれる。つくしが俺に肩を貸しながら
「また怪我しちゃうと大変だから、気をつけてね‥」
「あぁ‥」

真摯が表情に、ちょいと心が痛むが、


俺、頑張れ‥　


自分自身を鼓舞する。


形式的に、肩を貸してもらって、自室に戻る。
つくしの匂いを感じる。
爽やかでいて、どこか甘ったるい雌の匂いを感じる。

「少し横になるよね。ベッドでいいかな？」
並んで座った状態になって‥
抱きしめそうになって‥逡巡する

刹那‥
つくしが立ちあがる‥



「湿布頂いて来るね」
そう言いながら、部屋を出って行った。


「ハァッー」
ため息を吐きながら、つくしの出て行った先を見る。

もう一歩進みたい‥
なのに、進めないもどかしさ‥


俺なんかが、つくしに触れていいのか‥
穢してしまいやしまいか‥そんな思いが去来する。



「‥ダラシネェな‥」
ベッドに寝転がり、天井を見る。



ノックの音と共に‥

「総二郎さん‥足を挫かれたとか？」
ニッコリと笑いながら部屋に入ってくる。



「牧野さん、申し訳ないけれど‥しばらく総二郎さんのお世話をしてもらえるかしら？」

「あっ、はい。あたしで出来る事でしたら」
つくしは、負い目があるから断れずに‥
暫く、西門の屋敷で、俺の世話をする事に決まっていた。


「申し訳ないのだけど、総二郎さんの足の怪我の事は口外しないで頂戴ね」

「はい」

神妙な顔をして、コクンと頷いている。

「あら嫌だ。包帯を忘れてしまったわ。牧野さんとって来て下さる？」
お袋に言われて、部屋を出て行った。



お袋が、くるりとこちらに向き直り‥
「総二郎さん、全治１週間と言う事になさい」


なさい‥‥

天晴‥お袋
流石、西門を取りまとめているだけある。




チリーン　チリーン　チリチリチリーン　




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