一葉の写真 後編 総つく
牧野が西門に来るようになって、なぜか親父や弟までもが稽古の終わりを待ち、皆で飯を食うようになった。
人生生きてきて29年小っちぇえガキの時も味わったことのない≪ 家族団欒 ≫ なんてものが西門で毎週繰り広げられてるから驚きだ。
稽古の時の凛とした佇まいや、真摯な眼差しとは打って変わり、ケラケラと弾んだ声でよく笑い、美味そうに飯を食う牧野。「西門さんの家のご飯は何を頂いても皆美味しい」なんて、料理人泣かせの台詞を吐いてコック長を喜ばせてる。
牧野が来ると邸の空気が変わる。静謐の中に漂う温かな春の日差しのような空気...誰もが牧野に魅了される。
あぁーこんなあったけえー毎日を送りたいなーと、心から願うようになる俺。
牧野は? 俺の事どう思ってるんだ? ダメだ皆目見当もつかねぇ……
稽古のない時でも牧野は、俺が誘えば飯でも飲みにでもついては来る
……だけどそれだけ、それだけなんだ。
牧野から電話の一本、メールの一本があるわけじゃねぇ。
女にかけちゃ百戦錬磨だと自負してた俺。
実はすげぇ、へたれな野郎だったんだって事実に気がついた。
かぁっーー 恋ってどうすりゃ始まるんだ...
色々考え、考え抜いた俺...どうにもこうにもな状態で、破れかぶれで牧野に告白した。
「俺は、牧野が好きだ。」
「西門さん ありがとう。 でもね、あたし空っぽなの....」
「空っぽってなんだよ…」
「あたしね、あの日から...道明寺が記憶を失ってから恋が出来ないの」
「いつまでも高校生じゃないから、この10年人並みにお付き合いはしたんだよ。だけどね、あの日これ以上ないと思ってた恋を失ってから、あたしの心もどっかいっちゃったんだ...誰と付き合っても、誰と抱き合ってもあたしは、なにかが欠けたまんまなの」
「牧野はまだ司を忘れられねぇのか?」
「うーん どうなんだろうね」 クスッ 艶然と笑う牧野
「......道明寺を忘れるとか忘れられないじゃなくて、あたしの10代の恋を忘れられないのかな。あはっ もう10年経ってるのに可笑しいよね。」
「だったら忘れないでいい。忘れずに思ったまんまでいい。俺の傍にいろ。」
「うーーーん あたしは、あいつの友達とは恋はしないって決めてるんだ。」
「司に操たててるのかよ? あいつは5年も前に結婚して、子どもも居んだぞ…」
「うん。知ってるよ 類が教えてくれたからね」
「…類にも何度も言われたよ結婚して一緒にフランスに行こうって...」
「類もね、忘れられないなら、忘れなくていいって言ってくれたよ。 でもさぁ そんな事大切な人に出来ないよ。いくらあたしがズルくてもそんな優しさには逃げられないよ…」
「...だから、西門さんごめんね。」
「......だったら、お前あいつの事忘れろやぁ。俺がお前の思い全部ひっくるめて覚えててやるから。 牧野...いいや、つくしお前は全部忘れろ。全部全部忘れちまえ。 俺と恋が出来ねぇならそれはそれでいい。だけどお前は幸せになれ。それが10代のあの激しい恋をしたお前へ出来るたった一つの贈りもんだ。」
「......」
つくしはあれから西門にも俺の前にも姿を現さなくなった...
はらりはらりと舞い降りる紅葉...俺は空を仰いだ。
刹那 俺の前に大きな瞳のお前が立っていた
おまえの美しい瞳を見つめれば...俺への愛がつまってるのが解る...
「総、あたしねやっとやっと全部を思い出に出来たよ…総、あたしの事、あたしの16歳を忘れないであげてね」
あれから20年 つくしと俺の間には沢山の沢山の過去が出来た。
お前が西門に嫁いで、美桜が生まれて、桐斗が生まれ 俺等には沢山の沢山の思い出という過去が出来た。
高校生の時の俺達皆の写真を見ても、懐かしいと感じるだけになるほどの、俺等家族の過去が出来た。
なぁ、つくし俺はすんげぇー幸せだ
ありがとうなっ
「 …総、何か言った? 」
俺の全てが此処にいる。柔らかな笑顔で此処に居る
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人生生きてきて29年小っちぇえガキの時も味わったことのない≪ 家族団欒 ≫ なんてものが西門で毎週繰り広げられてるから驚きだ。
稽古の時の凛とした佇まいや、真摯な眼差しとは打って変わり、ケラケラと弾んだ声でよく笑い、美味そうに飯を食う牧野。「西門さんの家のご飯は何を頂いても皆美味しい」なんて、料理人泣かせの台詞を吐いてコック長を喜ばせてる。
牧野が来ると邸の空気が変わる。静謐の中に漂う温かな春の日差しのような空気...誰もが牧野に魅了される。
あぁーこんなあったけえー毎日を送りたいなーと、心から願うようになる俺。
牧野は? 俺の事どう思ってるんだ? ダメだ皆目見当もつかねぇ……
稽古のない時でも牧野は、俺が誘えば飯でも飲みにでもついては来る
……だけどそれだけ、それだけなんだ。
牧野から電話の一本、メールの一本があるわけじゃねぇ。
女にかけちゃ百戦錬磨だと自負してた俺。
実はすげぇ、へたれな野郎だったんだって事実に気がついた。
かぁっーー 恋ってどうすりゃ始まるんだ...
色々考え、考え抜いた俺...どうにもこうにもな状態で、破れかぶれで牧野に告白した。
「俺は、牧野が好きだ。」
「西門さん ありがとう。 でもね、あたし空っぽなの....」
「空っぽってなんだよ…」
「あたしね、あの日から...道明寺が記憶を失ってから恋が出来ないの」
「いつまでも高校生じゃないから、この10年人並みにお付き合いはしたんだよ。だけどね、あの日これ以上ないと思ってた恋を失ってから、あたしの心もどっかいっちゃったんだ...誰と付き合っても、誰と抱き合ってもあたしは、なにかが欠けたまんまなの」
「牧野はまだ司を忘れられねぇのか?」
「うーん どうなんだろうね」 クスッ 艶然と笑う牧野
「......道明寺を忘れるとか忘れられないじゃなくて、あたしの10代の恋を忘れられないのかな。あはっ もう10年経ってるのに可笑しいよね。」
「だったら忘れないでいい。忘れずに思ったまんまでいい。俺の傍にいろ。」
「うーーーん あたしは、あいつの友達とは恋はしないって決めてるんだ。」
「司に操たててるのかよ? あいつは5年も前に結婚して、子どもも居んだぞ…」
「うん。知ってるよ 類が教えてくれたからね」
「…類にも何度も言われたよ結婚して一緒にフランスに行こうって...」
「類もね、忘れられないなら、忘れなくていいって言ってくれたよ。 でもさぁ そんな事大切な人に出来ないよ。いくらあたしがズルくてもそんな優しさには逃げられないよ…」
「...だから、西門さんごめんね。」
「......だったら、お前あいつの事忘れろやぁ。俺がお前の思い全部ひっくるめて覚えててやるから。 牧野...いいや、つくしお前は全部忘れろ。全部全部忘れちまえ。 俺と恋が出来ねぇならそれはそれでいい。だけどお前は幸せになれ。それが10代のあの激しい恋をしたお前へ出来るたった一つの贈りもんだ。」
「......」
つくしはあれから西門にも俺の前にも姿を現さなくなった...
はらりはらりと舞い降りる紅葉...俺は空を仰いだ。
刹那 俺の前に大きな瞳のお前が立っていた
おまえの美しい瞳を見つめれば...俺への愛がつまってるのが解る...
「総、あたしねやっとやっと全部を思い出に出来たよ…総、あたしの事、あたしの16歳を忘れないであげてね」
あれから20年 つくしと俺の間には沢山の沢山の過去が出来た。
お前が西門に嫁いで、美桜が生まれて、桐斗が生まれ 俺等には沢山の沢山の思い出という過去が出来た。
高校生の時の俺達皆の写真を見ても、懐かしいと感じるだけになるほどの、俺等家族の過去が出来た。
なぁ、つくし俺はすんげぇー幸せだ
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