君の天使 01 司つく
「大当たりでーす!」
福引きの一等賞があたる。くじを48枚ひいた少女のあとに。
「おめでとうございまーす。1万人目の入場者です」
少女の後ろに居た人に、記念品と金一封が贈呈されている。
大当たりを見るのは、別に嫌じゃない。
それは、自分に関係していたり、余所の出来事ならば‥
なまじ、目の前で見せられる大当たりは、どうなのだろう?
目の前の大当たりを見せられ続ければ、自分の不運を笑うしかない状態だろう。
だけど、いつでも少女は
「すごーい、良かったですね」
ニッコリ笑う。
「じゃぁ、それ10個頂けますかしら?」
自分の目の前で、限定150個のケーキが売り切れる。
並んだ時間2時間半。
自分の前の残り全部を買い占めた女は、後からのんびりと来て、気の弱そうな知り合いの後ろに、ちゃっかり5分前に並んだ輩だ。
知り合いの女性が、申し訳なさそうに、ペコペコとお辞儀をする様を見て、可哀想だと少女は思ったのだろう。文句も言わずに前を開けたのだ。
暑い日だった。ここまで来るのに1時間電車に揺られてた。
暑い日だった。汗を掻きながら2時間半並んでた。
成果は、売り切れの札と、少女の後ろの人の「優しそうに振る舞って、順番譲ってるからだよ」の一言だった。
少女は、恐縮して平謝りに謝った。
その横を、残りの限定ケーキ10個全てを買った女が、しれぇーーっと通り過ぎて行く。
《 あの子に、決めた!》
オレが、あの子に決めた瞬間だった‥
あっ、オレ?
オレ、天使。そう、エンジェルって奴‥
人を幸せにするのが、オレの仕事。
コレでも、優秀な天使。
《うん。決めた!》
その時から、オレ‥
この時の少女、牧野つくしの、守護霊よろしく守護天使として付きまとってる?
うーん、付きまとってるって、あんまり良い表現じゃないね。
彼女と一緒に行動してる。
つくしを幸せにするのが、目下のオレのお仕事。
どんな風にだって?
天使がついた人間には、〝ミラクルの幸せ〟が、用意されるんだ。
ありきたりの幸せじゃダメだよ。みんなが驚くような、最高級な幸せに導くのがオレの仕事。
こん時のつくし? もう既にミラクルな人生を送ってた。
F4とかいうの? その内の道明寺司に熱烈に愛されてた。
でも哀しいかな‥オレがつくしに付くちょっと前に、破局が訪れてたんだよね。
まぁ、だから,‥‥
《彼女に決めたんだ》
***
「つくしーー」
「トモ‥大きい声出し過ぎ」
つくしが、今喋ってる相手が、道明寺司と破局して‥
6年目にようやっと付き合いだした男だ。
って‥‥オレ、6年もつくしに、付きまとってるんだ。
トモこと、寺沢朋生 まぁ、中々の好青年だね
つくしにゾッコンで、1年半粘って粘って、先週ようやっと付き合う事になったんだ。
つくしの勤める会社の取引先の御曹司。
多分、このまま行ったら結婚っていうゴールに走るんじゃないかな?って感じかな。
でもさぁー 天使が付いてるんだよ?
〝ミラクルな幸せ〟
にしちゃぁー トモは、物足りないんだよね。
なんで?って、このトモ‥完璧に近くてさ
顔ヨシ(不思議な事につくしの周りには、オレを筆頭に、いい男が集まる)
将来性ヨシ(オレがみてるかぎりじゃぁ、中々の経営者に育ちそうだ)
性格までヨシ と来てる。
トモの両親も、トモの会社の連中もつくしを気に入っている。
あんまりにも好青年だから‥‥
ミラクルとは‥‥なんか違うんだよね。
6年もオレが付いてるのに、こんなもん?って感じでさぁー
だから、ちょっとだけ、ちょっとだけ‥
イタズラする事にしたんだ。
オレ、君の天使だからね
えっ? 天使なのに?
あははっ、天使だからさ。
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