君の天使 03 司つく

「なんでぇー？えっ？えぇーー？１時間前って‥流石に早いよね」

そうじゃなくても、時間に正確なつくしは、
皆が出社するよりも４０分も前に来てるんだから。そりゃ早いよね。
さて、さて、オレの予想通りの行動をとってくれるかな？

つくしは、うーんうーん唸って悩んでいる。

グゥッ〜　
っん？腹の虫って奴だっけ？

「昨日食べすぎでお腹空いてないのかと思ってたけど‥
あははっ、ただ単に１時間早かっただけなのね」

一人呟いた後、何かを思いついのたか？

ポン！　と手を打って大きな鞄から、財布を出す。

「あった、あった、スフェンダミの優待チケット。折角だから行ってみちゃおうかな？ 」

にんまり笑って、踵を返した。
目的が決まれば、行動が早いつくしだ。足早に向かう。

スフェンダミは、巷で話題のお店だ。
世界で一番美味しいギリシャ料理を食べさせるお店ってね。

夜はバカ高いらしいのだけど、スフェンダミのモーニングは、とてもお得に食べれると評判だ。
それにしたって、税込み3240円。サービス料別だから、普段のつくしなら絶対に行かないだろう。


だけど‥
つくしの財布の中に入っていた、優待チケットを使えば、なんと、税込み　８８０円で食べれるのだ。
そりゃぁ、ニンマリ笑うよね。

「うふっ、１時間も間違いって‥あちゃぁーと思ったけど、案外あたしついてるんじゃない？」

ウキッとしながら、道中を急いでいる。
クスクスッ　相変わらず、単純だなぁーー。

まぁ、それがつくしのいい所なんだけどね。


スフェンダミのドアの前に立つ。
重厚な店構えに一瞬驚きながらも‥
社会人生活５年目にもなると、中々肝が据わってくる。
あたふたなんて、しやしない。

澄ました顔して、ウェイターの案内に従いながら、席に着いている。
流石、話題のお店だね。
モーニングなのに、８割りがた席が埋まっているよ。

奥の方には、個室も幾つかあるようだね。
ランチミーティングならず、モーニングミーティングなんかにも使うのかね？
それとも、どこぞのセレブが使うのかね？

つくしが、チラッと奥を見る。
本人は無意識なんだろうけど、この６年間‥続いてる行動。

つくしってさぁー、結構モテルんだよ。
トモ以外にも、つくしを狙ってた男は多いんだ。

トモは、それを全部蹴散らして、つくしを手に入れた。
取引先の御曹司って言う特権を使わなかったのが、功を成して、つくしの信用を勝ち取ったんだよね。

ホラッ、現にチラチラッと男どもが、つくしを見てる。
透き通る様な白い肌、漆黒の黒髪に、吸い込まれそうな大きな瞳。
それより何よりも、彼女の持つ雰囲気のせいなのかな？
男達が放っておかない。

まぁ、９割以上そんな視線には気がついてないんだけどね。
おぉっと、無駄話が過ぎたね。

モーニングコースがつくしのテーブルに並んだよねうだよ。

「うわっ、綺麗」
ニッコリとウェイターに笑う。

邪気のない微笑みに‥
女の微笑みなんて、思う存分注がれている筈のイケメンウェイター君が、
ボォッーとなってるよ。
つくしにとっては、そんな事は知ったこっちゃ無いけどね。


さてと、あとは待つのみかな？


誰をって？　っん？ここのオーナー会社の専務をさ。


そうそう、”　スフェンダミ　”　ってね‥‥
ギリシャ語でメープルって意味なんだ。



「うわっ、何コレ、メッチャ美味しいぃ」
つくしが最上級の笑みを浮かべて、食事をしてるよ。



パチンッ‥‥　登場だよ




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