刹那 32 総つく
待つ事10分‥‥
ガヤガヤと皆が集まってくる。
さっきまで、あーじゃないこうじゃないと話していたつくしが見る見るうちに固くなっていく。
触ったら、カチンッコチンッ と音がしそうな程に、緊張している。
見えないように、一つギュッと手を握った後に、小さな声で呟く。
「大丈夫か?」
「あっ‥うん。大丈夫‥‥‥‥じゃない‥」
今にも泣き出しそうなつくし。
やべっ、可愛すぎる‥‥
俺の鼓動は、ドキドキドキドキ音が聞こえそうに、早鐘打ちだした。
「つくし、俺も大丈夫じゃねぇや」
「えっ、総も緊張?」
「いや、お前が可愛すぎる」
「もう////」
耳まで真っ赤になって‥これまた可愛くてタマンネェや。
そうこうしてる間に、全員が席に着く。
乾杯の音頭を和尚にお願いする。
和尚が、グラスを手に取って、挨拶を始める。
「まずは、つくしちゃん、若宗匠、今日は楽しいバスツアーをありがとう」
あちらこちらから、ありがとうの声が上がる。
つくしは、恐縮しまくりだ。
「乾杯の前に、若宗匠からお話を頂きたいのだけど?皆さんは如何かな?」
あははっ、もうですか‥‥ そうですか‥
パチパチと盛大な拍手が、沸き起こる。
仕方ねぇなぁ‥決める時は決めねぇとな。
「本日は、withつくしin 伊豆 にお越し頂き大変ありがとうございます‥‥」
いやいや、そんな挨拶要らないからと野次が飛ぶ‥
いやいや、こちらにも‥心構えつぅもんが‥
なぁ、つくし。と隣を見れば、ど緊張で心ここに有らず状態だ。
しゃあねぇ、俺が気張んねぇとな。
「それでは、本題に入らせて頂きます‥‥全く持って簡略のご報告でありますが、今、隣におります‥牧野つくしと結婚したいと思っております。」
この言葉に、誰よりも驚いたのは
「えっ、はっ? ほっ? ふっ? えぇぇぇえぇーーーーー」
俺の隣の愛する女。
阿呆みたいに、口開けて‥俺を見ている。
皆の温かい視線が‥つくしに注がれる。
東雲夫人が手を叩いた次の瞬間、その場にいた全てのものが大きく手を叩いてくれる。
和尚が
「つくしちゃん、若宗匠を支えてやってくれんかの?」
つくしの瞳から、ポロポロと涙が溢れる。
「あたし‥‥なんにも持っていません‥それでも、総の若宗匠の隣に居ても宜しいのでしょうか?」
「つくしちゃんが、それを引け目に感じるのならば、儂の家の養女になればいい」
「あら、海雲和尚それは狡いですわよ。つくしちゃん、それなら、東雲の養女におなりなさい」
あら、それならば ‥‥嬉しい申し出が沢山で
「‥ぅすんっ‥ひっく‥っく‥っすん‥」
つくしが、盛大に泣き出す。
「つくしちゃん、儂らも儂らなりの策略があるのじゃよ。いわば、この結婚は政略結婚じゃよ。だからな、つくしちゃん、なんーも気にする事はないんじゃよ」
和尚がつくしに優しく語りかける。
俺とつくしは目を見合わせ、2人同時に同じ言葉を口にする。
「「政略結婚ですか?」」
「あぁそうじゃ、2人の結婚は、立派な政略結婚じゃ、特につくしちゃんにとっては、無理を強いる事になる。だが、どうかどうか若宗匠に、西門に嫁いで欲しいと、ここにいる皆が願っておる」
皆が一様に頷き、重鎮の大沼氏が
「牧野さんが、支えてくれるのなら若宗匠が、人間国宝と呼ばれる日も夢ではないでしょう‥他の女性じゃ、そうはいかん。牧野さんのお陰で、木偶だった若宗匠が、茶人になった。こんなに嬉しい事はなかったんですよ。西門総二郎が、若宗匠が居る限り、西門は安泰だと言い切れる程に、変貌を遂げたのですよ。」
東雲氏が後を引き続く
「つくしちゃん、お願いだよ。西門一門の安泰と若宗匠を立派な茶人にするために、ぜひとも西門に嫁いで欲しい」
つくしの涙は止まらない‥
視界が霞んで、ぼやける‥‥
「ありがとうございます。ありがとうございます」
何度も何度も頭をさげていた。
チリチリチリーンチリーン
良かったね、良かったね と鈴の音がなる。
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