君の天使 09 司つく
アルカイックスマイルを浮かべた役員秘書に促され、席に着いた。
緊張から、鼻の横を触ってる。
この緊張が、何に変わるか? ククッ見物だね。
「若いお嬢さんは、甘いものが好きと聞いてるが、君はどうかね?」
つくしの見た物は、足立音衛門の栗のテリーヌ。
ボーナスが入ったら、お取り寄せしちゃおうかなぁーなんて、密かに狙っていたものだ。
ゴクンッ 生唾を飲み込む音が聞こえる。
ゴロゴロ入っている栗に、目は釘付けだ。
「あっ、はい。大好きです」
あちらこちらから、そりゃ良かった。と感嘆の声が上がり、秘書が紙袋をつくしに手渡す。
「クリエイティブ部に差し入れと、自宅用だ。良ければ持って帰りたまえ」
つくしの目がキラキラと光る。
「よろしいんですか?」
ねぇねぇ、つくし‥ただより高いものはないんだよ
でも、そんな事には、気づかずに、ホクホク笑顔だ。
こんな所が、つくしがつくしたる所以なんだろうけどね。
美人秘書から、栗のテリーヌが入った袋を、しっかりと受け取った。
振る舞われた目の前の皿に、手を伸ばした。
《おぉ、流石‥美味でございまーす》
小ちゃく小ちゃく 呟いた瞬間‥
「人事部からはあとで、話は行くと思うが、牧野さん出向をお願いしたい」
っんぐっ
目を白黒させて、手前の玉露を飲む。
ゴックンッ‥‥
「アハハッハハッ、牧野さん大丈夫かね?」
大丈夫じゃない。そう言いたくても、目の前の人間は、お偉いさんだ。まぁ所謂、雲の上の人間だ。
「‥あっ、はい。大丈夫です」
無言の状態が訪れる。
流石、お偉いさん達。
ニッコリ微笑んで、黙ってじっと待っている。
もう、そりゃぁそりゃぁ 素晴らしい程の微笑みを称えてね。
やはりというか、然るべきと言うか‥
最初に根を上げたのは、勿論つくし。
「あの‥出向と言うのは‥」
「っん?そのままの話でね、他所の会社に行って欲しい」
「そ、それは‥どういった扱いなのでしょうか‥」
つくしの頭の中を、色々な事が渦巻いている。
「アハハッ、そこ気になるよね。勿論、栄転扱いだよ。牧野さん、君、凄いねぇー」
一斉に、お偉方が頷く。
「先方は、是非君に来て欲しいと」
先方が是非に? つくしは怖ず怖ずと
「あの‥先方と言うのは‥どちらのぉーー」
「おっ、これは失礼、失礼」
ニンマリ、そりゃぁ嬉しそうに、微笑みながら
「道明寺HDだよ」
「へっ」
ククッ、もうね目が真ん丸。
大きな黒い瞳が、落っこちそうになってる。
「あとの事務的な事は、人事部長に一任してあるからね。何はともあれ、我が社の社運もかかっているから頑張ってくれたまえ」
やるねぇー 流石、お偉いさんだ。
有無も言わせず、話を勧めて行く。
「じゃっ、宜しく頼んだよ。広瀬、あとの手続きをお願いするよ。それでは私どもは失礼させて頂くよ」
部屋には、人事部長の広瀬なる女性と、つくしの2人が残された。
広瀬さんは、ニッコリと笑って
「それでは、こちらの用紙を一読頂けますか?」
つくしの前に、資料が置かれた。
オレの、頬は緩みっぱなしだ。
司、やるねぇー
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事
-
- 君の天使 12 司つく
- 君の天使 11 司つく
- 君の天使 10 司つく
- 君の天使 09 司つく
- 君の天使 08 司つく
- 君の天使 07 司つく
- 君の天使 06 司つく