君の天使 11 司つく
首をぐるんと一つ回して、紙袋と、書類を脇に抱え、部屋を出る。
パタンッ
会議室に残されたのは、綺麗に置かれた皿と湯のみと、オレ。
トモ‥可哀想だけど、トモのミラクルはつくしじゃない。
好きな男には、女って、もっともっと嬉しそうにしたり、逆に切なそうになったりするんだ。
有頂天のトモの事を思って、可哀想になった。
同時に、今は、つくしが好きで好きで堪らないかもしれないけど‥‥トモのミラクルのためにも、諦めたほうがいい。
改めて、そう確信したんだ。
おっと、感傷に浸っていられないね。
つくしの後を追いかけなきゃね。
丁度、クリエイティブ制作部のドアに、手にかけた瞬間だった。
ガチャリッ
つくしが、部屋に入った瞬間、盛大な盛大な拍手が起こり、口々に
「「「「「おめでとうー」」」」」
の嵐だ。
「牧、お前のがんばりが認められたな」
「つくし、良かったね」
「うちの部署も鼻高々だな」
「私達が、直接の担当みたいだから、牧ちゃんが向こうに行っても会えるね」
そんな言葉が飛び交う。
複雑な表情を浮かべて、曖昧に笑った時だった。
同僚の家崎さんに
「つくし、明日には、もう向こうに行くんだって?」
「えっ?」
「えっ?って、さっきからその準備で、部のみんなかり出し中だよ」
なんせ、つくしは、下っ端だ。
水素水のキャンペーンも落ち着いた今は、差し当たって、メインで担当してるものも無かったんだよね。
それにしても、明日ってないよねぇー
ククッ、司ってセッカチなんだね?
もともと忙しい部署だ。たまたまエアーポケットのように、全員の仕事がぽっかり空いてた。
‥なんて事はなく、最優先の業務命令で、つくしの引き継ぎを行ってる所だ。
「あの‥担当先への挨拶とかって?」
「それは、こっちに半日出勤の時にでもって話が出てたよ」
「半日出勤?」
「向こうに移動になっても、週一で半日こっちに来るみたいだよ。って、説明なかった?」
つくしがコクンコクン頷いている。
「契約書とかは?」
あっ!! そんな顔をして‥
ガサこそと、書類を取り出す。同時に、栗のテリーヌを家崎さんに手渡す。
「差し入れだって」
受け取った紙袋の中身も確かめながら
「うわっ足立音衛門じゃん。しかも木箱入りのー凄い凄い」
ウキッとしながら、給湯室に消えて行った。
残されたつくしは、席に腰掛け契約書を読み出した。
牧野つくし
道明寺HD 営業推進部※に、出向
そう書かれている。
「営業推進か‥」
少しホッとした表情になった。
安堵したから、※マークの詳細が、旨い具合に途中ページに隠されてた?いいや、入れられた事に気がつかなった。
仕事、出来なくないのに、詰めが甘いよなぁー
オレ、心配しちゃうよ。ププっ
ペラペラと捲って、勤務条件の箇所を見つける。
週に一度、クリエイティブ制作への出勤と書かれている。
道明寺HDの仕事は、制作部が一手に引き受けて行くようだ。
ククッ、これが‥つくしの足枷にもなるんだけどね。
やるね〜 司
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