狂熱 03 総つく
スマホの音が鳴り響く
「っん?」
時計を見ると、まだ朝の5時半‥こんな時間に誰?
手探りで、スマホを探す。
‥はい‥‥
寝ぼけた頭でスマホに出ると、妙に明るい声が聞こえてくる。
「ヨッ、これから30分で迎えに行くから、海行く準備しとけ」
えっ と言う暇もなく‥切られる電話‥
相変わらず‥自分勝手なんだから‥
身勝手さに怒るふりをしながらも、心の中は喜びに溢れていくのをあたしは知っている。
ホラッ、鏡に映るあたしは、とっても少女で可愛いんだ。
慌てて身支度を整える。
窓の外を見ると、太陽の陽が快晴を告げている。
時計とにらめっこしながら、慌てて用意をする。
心の中が浮き足だって、総を好きな気持ちが、溢れ出していく。
ピンポーン
愛しい人の来訪を告げるチャイムの音が鳴り響く。
嬉しさを噛み殺し、不機嫌さを装って玄関に向かう。
**
きっかり30分後、お前の家の前に着いていた。
見上げれば、真っ青な空が広がっている。
怒った振りをしながら、お前が俺を迎える。
このまま、抱いちまいたい所だが、我慢しながら小さく口づけを落とす。
「もう、騙されないんだからね」
なんて、プリプリ怒りながら後を付いてくる。
海に向かって、いいや俺とお前の未来に向かって、車を走らせる。
ヨットに乗って海に出た。逃げ道のない沖の上。
俺とお前しかいない海の上。
つくしの髪の毛を弄ぶ
「髪、伸びたな‥」
「うふふっ そうだね」
再会して、3年の月日が経つ。抱き合うようになって2年だ。
「なぁ‥」
「っん?海の真上でしたいの?」
クスクス笑って、俺を誘う目をする。
「当たってるけど、違うな」
「っん?何それ」
つくしが、クスクス笑う。
俺の次の言葉を聞いたらお前はどうすんだ?
「なぁ‥」
「っん?だから何?」
「結婚しよう。ってか、嫁になれ」
目をまん丸に開かせて。
「‥‥冗談だよね?」
そんな事を聞いてくる。
「あぁはっ、冗談じゃねぇよ」
大きな瞳から、涙を一粒こぼしながら
「あたし‥‥庶民だよ。なんの後ろ盾も無いんだよ」
「全部承諾済みだから心配すんな」
「あたし‥‥淫乱だよ」
「あぁ、知ってんぞ、俺限定のな」
「あたし‥‥嫉妬深いよ」
「お前に、嫉妬される様な事、お前と再会してから、一度もねぇよ」
全部、否定しても否定しても
あたし‥‥ あたし‥ と言ってくる。
「なぁ、俺んちなんて、化けもんがいっぱいだぞ。
そんでも俺と一緒に修羅について来い。そう言ってんだ。
それともお前は、その勇気がないのかよ?」
力強く首を振り
「総が、総さえあたしの手に入るのなら、あたしは修羅に進んで付いてくよ」
「なぁ、それって、イエスってことだよな?」
真っ赤になって、コクンと頷く。
長い長いキスを落として、海の上で抱き合った。
「なぁ、今日は朝まで一緒に居れるよな?」
「‥うん。」
ずっとずっと苦しかった‥
お前の帰る姿を見るのが‥
ずっとずっと‥
そんな言葉は、心の中に押し込んで、つくしをギュッと抱きしめれば‥
つくしは、ハニカミながら
「総、そんなに強く抱きしめたら苦しいよ‥」
人の気持ちも知らねぇで、言いやがる。
「あぁ、俺も苦しかった。ずっとずっと苦しかった。だから我慢しろ」
俺が言えば、つくしが小ちゃく呟いた
「ずっと苦しかったのは‥総だけじゃないよ」
二人で顔を見合わせて、口づけを交わす。
ピーヒョロロロロ
頭上を鳶が舞う。
俺たちは、二人で苦しかった思いに終止符を打ち
苦しかった思いを、幸せに変えて行く。
俺たちの未来を祝福するように、海が凪いでいる‥‥
完
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