紅蓮 03 つかつく
夕刻過ぎ、宗谷の希望のかぶら煮を炊く。
カタカタッと雪平の鍋の落し蓋が揺れている。
宗谷から料理を頼まれるのは嬉しい。
あたしのために作られた台所だから、宗谷以外は、誰も入ってこない。
ここの空間ならば、誰の目を気にすることなく振る舞えるから。
屋敷の中では、二階堂の目が光り、鼻歌さえ気軽に口ずさめない。
あたしは、二階堂の真似をする。
「つくし様、宗谷家の奥方様として…」
ぷっ、五月蝿いちゅぅのー 宗谷家の奥様って言うけど、
殆どここで過ごしてるあたしに、それがどうした?って感じだっつーの。
時計の針は、もうじき6時を指そうとしている。
あ1時間程で、宗谷が帰って来る事だろう。
そろそろ用意をしなくてはいけない。
面倒くさいなぁー。そう思うけど‥
宗谷の機嫌をそこねるよりは良いのかもしれない。
「つくし様」山下が声をかけてくる。
「あっ、はい。ただ今参ります。」
山下と幾人かの女性が、あたしのお世話係だ。
外出の際は勿論の事、下手すると、お屋敷の中の庭園でさえ付き添われる。
携帯は勿論の事、お財布さえ持たない。
ううん、持たせて貰えない生活。
ハンカチ一枚、いいや10円のガム一つでさえ、自分で買う事が出来ない生活。
コンビニで自由に買い物していた頃を懐かしむ。
道明寺のコンビニデビューは、あたしとだったんだよね~ ぷぷっ、あん時の顔。
幸せだった時の事を思い出す‥
心の中がポワッと温かくなって‥
その後に、凍てつく寒さが襲って来る。
慌てて首をふり、浴室に向う。
着衣を脱がされ、全身を洗われる。
こんな生活も、もう3年‥
単純に計算しても1000回以上こうして身体を洗われている。
なのに、いつまで経っても慣れない。
いいや一生慣れる事はないだろう。そう思う。
入浴くらい一人でノンビリしたいよね。
宗谷に訴えたけど、頑として首を縦に振りはしない。
やっと許されたのは、睦言の後、シャワーを宗谷と浴びる事だけだ。
本当は、一人で浴びたいけれど、それは許して貰えなかった。
湯浴みを終えたあたしは、真っ直ぐに立つ。
汗がひくまで、浴衣を羽織る。
美しい着物を羽織り終えた頃、宗谷がじきに戻ってくると声を掛けられる。
屋敷の中に、ピリリとした空気が流れている。
宗谷を出迎えに、玄関の前で二階堂達と共に待つ。
一斉に、お帰りなさいませと声がする。
宗谷が、あたしに向けて笑顔を放つ。
彼は、花菖蒲のように美しい。
冷酷な表情を普段は決して崩さない男が、あたしにだけ、笑顔を向ける
宗谷の後ろには、和服姿の客人が立っている。
「若奥様、大変お久しぶりでございます」
2人があたしに声をかけてくる。
籠の鳥のあたしへの、宗谷からのお土産だ。
「若宗匠、桜子さん お久しぶりでございます」
だけれども、極力感情を露にしないように注意しながら、言葉を返す。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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宗谷から料理を頼まれるのは嬉しい。
あたしのために作られた台所だから、宗谷以外は、誰も入ってこない。
ここの空間ならば、誰の目を気にすることなく振る舞えるから。
屋敷の中では、二階堂の目が光り、鼻歌さえ気軽に口ずさめない。
あたしは、二階堂の真似をする。
「つくし様、宗谷家の奥方様として…」
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殆どここで過ごしてるあたしに、それがどうした?って感じだっつーの。
時計の針は、もうじき6時を指そうとしている。
あ1時間程で、宗谷が帰って来る事だろう。
そろそろ用意をしなくてはいけない。
面倒くさいなぁー。そう思うけど‥
宗谷の機嫌をそこねるよりは良いのかもしれない。
「つくし様」山下が声をかけてくる。
「あっ、はい。ただ今参ります。」
山下と幾人かの女性が、あたしのお世話係だ。
外出の際は勿論の事、下手すると、お屋敷の中の庭園でさえ付き添われる。
携帯は勿論の事、お財布さえ持たない。
ううん、持たせて貰えない生活。
ハンカチ一枚、いいや10円のガム一つでさえ、自分で買う事が出来ない生活。
コンビニで自由に買い物していた頃を懐かしむ。
道明寺のコンビニデビューは、あたしとだったんだよね~ ぷぷっ、あん時の顔。
幸せだった時の事を思い出す‥
心の中がポワッと温かくなって‥
その後に、凍てつく寒さが襲って来る。
慌てて首をふり、浴室に向う。
着衣を脱がされ、全身を洗われる。
こんな生活も、もう3年‥
単純に計算しても1000回以上こうして身体を洗われている。
なのに、いつまで経っても慣れない。
いいや一生慣れる事はないだろう。そう思う。
入浴くらい一人でノンビリしたいよね。
宗谷に訴えたけど、頑として首を縦に振りはしない。
やっと許されたのは、睦言の後、シャワーを宗谷と浴びる事だけだ。
本当は、一人で浴びたいけれど、それは許して貰えなかった。
湯浴みを終えたあたしは、真っ直ぐに立つ。
汗がひくまで、浴衣を羽織る。
美しい着物を羽織り終えた頃、宗谷がじきに戻ってくると声を掛けられる。
屋敷の中に、ピリリとした空気が流れている。
宗谷を出迎えに、玄関の前で二階堂達と共に待つ。
一斉に、お帰りなさいませと声がする。
宗谷が、あたしに向けて笑顔を放つ。
彼は、花菖蒲のように美しい。
冷酷な表情を普段は決して崩さない男が、あたしにだけ、笑顔を向ける
宗谷の後ろには、和服姿の客人が立っている。
「若奥様、大変お久しぶりでございます」
2人があたしに声をかけてくる。
籠の鳥のあたしへの、宗谷からのお土産だ。
「若宗匠、桜子さん お久しぶりでございます」
だけれども、極力感情を露にしないように注意しながら、言葉を返す。
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