紅蓮 05 つかつく
2人と会話を楽しむ。
桜子が、そっとあたしに手紙を渡して来る。
あたしは、違う話題を交わしながら、そっと受け取る。
襖が開き、宗谷が入ってくる。
あたし達は、立ち上がり宗谷を迎える。
宗谷は、美しい笑みをたたえあたしの横に腰掛ける。
彼の前では、決してこの2人と必要以上に仲良さげにふるまっては、いけない。
宗谷にとって、あたしは人形。
人形は、意思も持ってはいけないから。
美しいべべを着て、横に座っているのがあたしの役目だから。
あたしの夫、宗谷凌は、宗谷グループの次期当主だ。
美しく、怜悧な人物。感情を露にする事がない人。
本人がそうであるように、美しいものを好む。人も物も、空間も。
かつてのあたしの愛した男が、目の前の友人が、そうであるように、
欲するものは何でも与えられて育ってきた男だ。
どこにいても、何をしても優遇されるのが、当たり前の男。
周りの者達が、媚びへつらってしまうような、威厳と美しさを持つ男だ。
大学を卒業したあたしは、行儀見習いとして通っていた西門の広報にそのまま就職した。
時期をみて、道明寺と結婚する予定だった。
幸せだった。だけど、暗闇はすぐ側で手招きをしていた。比例するかのように世界経済の悪化が襲って来たんだ。
ぎりぎりまで踏ん張ったし、ギリギリまで踏ん張ってくれた。2人で沢山沢山話し合った。だけど、時期が悪かった。あたしは、あいつと紡ぐ未来を諦めた。
道明寺と別れ、伽藍堂だったあたしは、西門の茶会で、宗谷に出会った。幾度となく会う要件が重なり、その内、用がなくても二人で過ごすようになった。宗谷の中の威厳と美しさに、あいつを重ねた。不思議な事に宗谷は、あたしの形を愛した。
4年前、パパが到底返せない額の借金を抱え、時を同じくしてママが倒れた。そんなあたし達一家に手を差し伸べてくれたのが宗谷だった。
借金の返済、ママの治療費、進の学費。全てを世話になった。いいや、いまもなっている。
宗谷は、決して自分から見返りを求めてはこなかった。
ただただ、あたしの形を愛した。
伽藍堂だったあたしは、宗谷の愛を受け入れた。
宗谷に愛は返せないけれど、宗谷の愛を受け入れた。
あたしは身体を与えた。
いったん手に入れば、すぐに飽きがくるだろうと思っていた。
誤算だった‥‥
あたしは、西門の養女になり、
西門つくしとして宗谷に嫁ぐ事に、いつの間に決まっていたのだから。
「つくし、つくし‥」
「あっ、はい」
「若宗匠のお披露目が、10月に決まったそうだね」
「はい。今日連絡がありました」
宗谷の眼孔が悋気で光る。
刹那
あたしは幾つかのミスを冒した事に気が付いた。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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あたしは、違う話題を交わしながら、そっと受け取る。
襖が開き、宗谷が入ってくる。
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宗谷は、美しい笑みをたたえあたしの横に腰掛ける。
彼の前では、決してこの2人と必要以上に仲良さげにふるまっては、いけない。
宗谷にとって、あたしは人形。
人形は、意思も持ってはいけないから。
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あたしの夫、宗谷凌は、宗谷グループの次期当主だ。
美しく、怜悧な人物。感情を露にする事がない人。
本人がそうであるように、美しいものを好む。人も物も、空間も。
かつてのあたしの愛した男が、目の前の友人が、そうであるように、
欲するものは何でも与えられて育ってきた男だ。
どこにいても、何をしても優遇されるのが、当たり前の男。
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大学を卒業したあたしは、行儀見習いとして通っていた西門の広報にそのまま就職した。
時期をみて、道明寺と結婚する予定だった。
幸せだった。だけど、暗闇はすぐ側で手招きをしていた。比例するかのように世界経済の悪化が襲って来たんだ。
ぎりぎりまで踏ん張ったし、ギリギリまで踏ん張ってくれた。2人で沢山沢山話し合った。だけど、時期が悪かった。あたしは、あいつと紡ぐ未来を諦めた。
道明寺と別れ、伽藍堂だったあたしは、西門の茶会で、宗谷に出会った。幾度となく会う要件が重なり、その内、用がなくても二人で過ごすようになった。宗谷の中の威厳と美しさに、あいつを重ねた。不思議な事に宗谷は、あたしの形を愛した。
4年前、パパが到底返せない額の借金を抱え、時を同じくしてママが倒れた。そんなあたし達一家に手を差し伸べてくれたのが宗谷だった。
借金の返済、ママの治療費、進の学費。全てを世話になった。いいや、いまもなっている。
宗谷は、決して自分から見返りを求めてはこなかった。
ただただ、あたしの形を愛した。
伽藍堂だったあたしは、宗谷の愛を受け入れた。
宗谷に愛は返せないけれど、宗谷の愛を受け入れた。
あたしは身体を与えた。
いったん手に入れば、すぐに飽きがくるだろうと思っていた。
誤算だった‥‥
あたしは、西門の養女になり、
西門つくしとして宗谷に嫁ぐ事に、いつの間に決まっていたのだから。
「つくし、つくし‥」
「あっ、はい」
「若宗匠のお披露目が、10月に決まったそうだね」
「はい。今日連絡がありました」
宗谷の眼孔が悋気で光る。
刹那
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