明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

紅蓮 19  つかつく

醜くなったあたしの身体を、宗谷は愛する。
愛おしそうに、愛撫する。

宗谷を憎んだあの日から、幾つの夜が過ぎたのだろう。
“宗谷つくし” になって気が付けば3年だ。
3年の間に、全てが変わってしまった気がする。

病室の扉がノックされる。使用人が扉を開けると
病院長が看護婦長と共に立っている。宗谷の所へ、挨拶にやって来たのだろう。

「屋上庭園に行って来ても宜しいですか?」
「‥あぁ、外には出ないように」
一瞬の間をおいて、宗谷のお許しが出る。
この病院内で許された、あたしのたった一つの自由かもしれない。

セキュリティーの厳しい病院だ。
受け付けの外に勝手に出入りする事など出来ない。
ましてや、あたしを勝手に出すな。そう厳命されていることだろう。

あたしとて、そんなにバカではない。
脱走しようなんて思わない。
ただ、ママの病室で繰り返される卑屈な笑みを、吮癰舐痔(せんようしじ)を見たくないだけ‥

チーン
エレベーターが屋上庭園につく。
何から何まで贅を尽くした病院は、こんな所にまで贅をかけている。

風が強いからか、美しい庭園には、誰の姿も見あたらない。
いや、一人の老婆が、あたしの前に居た。

「つくし‥かい?」
老婆があたしに声をかける。

「‥タマ先輩‥」
どうしてここに?何かご病気でも?
聞きたい事は山ほどあるのに‥口をついてでた言葉は
「お元気ですか?」
「ははっは、奥様になってもつくしはつくしじゃ」
タマ先輩は、そう言って愉快そうに笑った。

体調を崩した友達の見舞いに来たが、回診の時間になったので、
部屋を抜けてきたらしく、本人は至って元気そのものだと。
元気な姿を見れて、あたしは安堵する。

「良かった。お元気そうで」
もう一度、同じ言葉を繰り返す。
タマ先輩と話す間も、あたしは時間が気になり、何度も懐中時計で時間を確認する。
部屋を出て10分が経つ。
そろそろ戻らないと、宗谷が来てしまう。

「タマ先輩、あたし戻らないと行けないので、先にお暇させて頂きますね」
失礼を詫び、ベンチから立ち上がる。後ろからタマ先輩の声がする

「つくしは、今幸せかい?」

あたしの双眼から、涙が溢れそうになる。
ここで泣いてはいけない。必死に涙を堪える。あたしは振り向かず

「えぇ、とても幸せです」
幸せですの言葉を残し、その場を去った。

病室に戻ると、パパと宗谷があたしを待っていた。
パパの表情が、見るからに安堵した表情に戻っていく。

あたしは、ママの顔を見て声を掛ける
「ママ、またくるね」
パパに見送られ、病院を出る。

迎えの車の中、あたしは宗谷の指に自分の指を絡ませる。
「凌さん、ありがとうございました」
耳許で言葉を紡ぎ、耳朶を齧る。

宗谷が満足げに、あたしを抱き締める。
「つくし、可愛い私のつくし‥」




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2 Comments

にこ  

みかん様

動きがありそうで、ない紅蓮‥

2016/04/18 (Mon) 16:49 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/18 (Mon) 14:52 | EDIT | REPLY |   

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