明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

紅蓮 20 つかつく

色とりどりの反物が、目の前に並べられる。
店主の手で、畳の上に、蝶々が舞う。
「綺麗」
あたしが言うと、宗谷が嬉しそうに笑う。
店主が、あたしの肩に反物を掛けようとした瞬間、
パシッ 宗谷が、店主の手を払いのける。
店主の顔が青ざめ、女将と共に平謝りをする。

丁度、その時あたしの目に飛び込んできたのは‥
「凌さん、見て」
白地に、色とりどりの蝶が舞っている
「菊子さん、その反物を羽織らせて頂けますか?」
反物を持ち、棒立ちになっている若女将に声を掛ける。
「あっ、はい。大変失礼致しました」
あたしの身体に、反物が掛けられると、宗谷が相好を崩す。
「少しお待ち下さいませ」
若旦那が、白繻子に宝相華の帯を持って来る。
「ほぉっー、白繻子か。つくしどうだい?」
「これが、よぉございます」
機嫌を直した、宗谷が何点か着物と帯を選ぶ。
帰りがけ
「つくしのことは、これから若女将にお願いするよ」
そう言い残す。

宗谷の屋敷の担当が変わる‥ 影響は計り知れないだろう。このお店の権限は、今後、菊子さんが握っていくのだろう。

宗谷家御用達の宝石店を訪れる。
一見さんお断り、どんなにお金を持っていても、余程の紹介がない限り入店する事も出来ない老舗店。
本来のあたしには、縁もゆかりもない場所。
バロック調のソファーに、腰掛ける。
あたしの担当の室井が、いくつかの品と、貴石をもってやってくる。
「下の方は、キャプティブビーズリングで10Gで宜しいでしょうか」
暗号のような言葉‥
流石、金持ち‥なんでも融通がきくんだと感心する。
金あれば 何でも叶う 老舗店
あははっ 一句浮かんだ

「どうしたかね」
怪訝な顔で、宗谷が聞いてくる。
「お着物に合わせてなんて、誰も想像しないかと思って」
「私の妻に対して、そんな想像を働かせる輩がいたら、とことんに潰すよ」
決して冗談で言っていると思えない口ぶりで、宗谷が囁く。

バカじゃないのかと思う。
誰も,そんな変態趣味なんて考えないよ。と突っ込みを入れたくなるけれど‥
アルカイックスマイルとやらで、曖昧に微笑む。
菩薩の表情? モナリザの笑顔?
そんな事は、どうでも構わない。一度作り方を覚えてしまえば、楽な表情だなぁーと思う。

ほんの少し、機械的に口元を緩めるだけで、瞳も微笑むのだから‥

宗谷になんて、あたしの本当の笑顔は見せてあげない。
フッ、別に見たくもないか‥

木偶人形 微笑してれば それでいい
あははっ あたし‥今日冴えてるな。

違う…
‥別な事を考えていないと、タマ先輩に言われた言葉を思い出してしまうからだ。

「幸せかい?」
この生活に、幸せなわけなどある筈がない。

違う‥…
この生活じゃなくとも、あたしに幸せなど訪れるわけが無い。

それなりに、楽しい時はある‥だけど、司を失った日から、幸せなんて感じた事はない。

空を自由に飛べない小鳥は、心からの幸せを得る事はできないだろう。

司と別れを決めた日、あたしの片翼は、もぎ取られたのだ。

空を飛べない小鳥には、幸せなど訪れない。

誰かの元で可愛がってもらえるように、良い声で啼き続けるだけ。

「‥し様、つくし様」
「あっ、はい」
「貴石は、こちらのもので宜しゅう御座いますでしょうか?」
室井が出したのは、ペルー産の非加熱ピジョンブラットルビー
あたしの心を流れ続ける血のように紅い。

あたしは、宗谷の顔を見上げる。宗谷が、満足げに微笑んでいる。



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4 Comments

にこ  

さとぴょんさま

パシッに反応して頂いて、大変嬉しゅうございます。
宗谷…爽やかさが一ミリもないと言う…えへへ

2016/04/19 (Tue) 18:38 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/19 (Tue) 18:24 | EDIT | REPLY |   

にこ  

みかん様

おっ、あの容姿がタイプなのね~

2016/04/19 (Tue) 15:26 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/19 (Tue) 12:39 | EDIT | REPLY |   

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