紅蓮 32 つかつく
シャラーン シャラーン 鈴の音が鳴る。
宗谷の帰りを告げる鈴が鳴る。
「つくし様、ご主人様が、お戻りになられました」
あたしつきの侍女が声をかけてくる。
山下が、2言、3言返事を返しているのが、聞こえる。
あたしは、布団を被り目を瞑る。
目を瞑れば、何も考えなくてもいいとばかりに、目を瞑る。
スーっと 襖が開き、宗谷が入ってくる。
傍らに来て、あたしを見下ろしている。表情は見えない。
宗谷が小さな声であたしを呼ぶ。
「つくし、つくし‥」
まるで、今気が付いたかのように目を覚ます。起き上がろうとすると
「そのまま寝ていなさい。これからおさじの先生がいらっしゃる」
「凪子先生ですか?」
今日もお会い出来るのかと嬉しくなったあたしは次の瞬間、地獄に突き落とされる。
「新しい先生に、来て頂く事にしたよ」
「‥‥‥何故でいらっしゃいますか?」
泣きそうになるのを堪え、問いかける。
もう決まってしまった事を、覆す事など不可能な事は知っている。だけど‥他に術がないから、あたしは問いかける。
「それは、つくしが一番知っていることじゃないかな?」
薄く美しい唇が、楽しそうに歪んでいる。
あたしは、首をふる。幼子がイヤイヤをするように首をふる。
「つくし、リングは、そろそろ外さないとけないね」
「そうそう、お義母様には、病院を移って頂いた」
言葉の刃が、あたしの心に突き刺さる。
宗谷は、全て知っていたのだ‥
知っていて、あたしは泳がされていたのだ。
宗谷の掌で。
次の瞬間、あたしは言葉を放つ
「‥‥嫌い‥嫌い‥嫌い‥あなたなど嫌いです」
後ろに控えていた山下が、宗谷に必死に弁解しているのが目に入る。
「つくし様は、熱がございまして普通の状態ではございませんので‥何卒、何卒‥‥」
宗谷に、必死に言っている。
「ははっ、せん妄だというわけかね?」
「左様でございます」
「‥ち‥う‥ちが‥う‥違う‥あたしは、あなたなど大嫌いです」
宗谷の笑い声が聞こえ
「嫌いでも構いはしない。つくしは一生ここから自由になどならないよ。一生私の手許にいるのだからね」
宗谷の手が、あたしを抱き締める。
「つくしは、蝶が大好きのようだから、裏庭に蝶の温室を作る事にしたよ」
薄い唇が、愉快そうに笑う。
「つくしが、私を愛そうが愛さまいが、そんなのは構わない。つくしは、私の子を孕み、ここに留まるしかないのだからね」
宗谷が笑う。可笑しそうに声をたて‥
全身から血の気が引いて行き、喉が張り付き、声が出ない。
宗谷が、さも楽しそうに胸元にあたしを引き寄せる。
あたしの首筋を宗谷の舌が這う。
チロリチロリと舌が這う。
あたしに残されたのは、絶望しかない
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♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
宗谷の帰りを告げる鈴が鳴る。
「つくし様、ご主人様が、お戻りになられました」
あたしつきの侍女が声をかけてくる。
山下が、2言、3言返事を返しているのが、聞こえる。
あたしは、布団を被り目を瞑る。
目を瞑れば、何も考えなくてもいいとばかりに、目を瞑る。
スーっと 襖が開き、宗谷が入ってくる。
傍らに来て、あたしを見下ろしている。表情は見えない。
宗谷が小さな声であたしを呼ぶ。
「つくし、つくし‥」
まるで、今気が付いたかのように目を覚ます。起き上がろうとすると
「そのまま寝ていなさい。これからおさじの先生がいらっしゃる」
「凪子先生ですか?」
今日もお会い出来るのかと嬉しくなったあたしは次の瞬間、地獄に突き落とされる。
「新しい先生に、来て頂く事にしたよ」
「‥‥‥何故でいらっしゃいますか?」
泣きそうになるのを堪え、問いかける。
もう決まってしまった事を、覆す事など不可能な事は知っている。だけど‥他に術がないから、あたしは問いかける。
「それは、つくしが一番知っていることじゃないかな?」
薄く美しい唇が、楽しそうに歪んでいる。
あたしは、首をふる。幼子がイヤイヤをするように首をふる。
「つくし、リングは、そろそろ外さないとけないね」
「そうそう、お義母様には、病院を移って頂いた」
言葉の刃が、あたしの心に突き刺さる。
宗谷は、全て知っていたのだ‥
知っていて、あたしは泳がされていたのだ。
宗谷の掌で。
次の瞬間、あたしは言葉を放つ
「‥‥嫌い‥嫌い‥嫌い‥あなたなど嫌いです」
後ろに控えていた山下が、宗谷に必死に弁解しているのが目に入る。
「つくし様は、熱がございまして普通の状態ではございませんので‥何卒、何卒‥‥」
宗谷に、必死に言っている。
「ははっ、せん妄だというわけかね?」
「左様でございます」
「‥ち‥う‥ちが‥う‥違う‥あたしは、あなたなど大嫌いです」
宗谷の笑い声が聞こえ
「嫌いでも構いはしない。つくしは一生ここから自由になどならないよ。一生私の手許にいるのだからね」
宗谷の手が、あたしを抱き締める。
「つくしは、蝶が大好きのようだから、裏庭に蝶の温室を作る事にしたよ」
薄い唇が、愉快そうに笑う。
「つくしが、私を愛そうが愛さまいが、そんなのは構わない。つくしは、私の子を孕み、ここに留まるしかないのだからね」
宗谷が笑う。可笑しそうに声をたて‥
全身から血の気が引いて行き、喉が張り付き、声が出ない。
宗谷が、さも楽しそうに胸元にあたしを引き寄せる。
あたしの首筋を宗谷の舌が這う。
チロリチロリと舌が這う。
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