明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

紅蓮 34 つかつく

あたしの身体の微熱が引いたのは、全てを奪われたあの日から、二週間後のことだった。
その間に、あたしの身体から、避妊リングは取り払われた。
それと共に,健康診断、ホルモン値の検査、卵管造影の検査諸々が行われた。
皮肉な事に、「妊娠出産に関して何の問題もございません」医師からお墨付きまで貰う。

二週間の間に変わった事は、あたしの為に作られた台所の撤去だった。
唯一、一人になれる場所が無くなったのを見た時は、足元から力が抜け、へなへなと床に踞ってしまった。
山下の代わりに来た侍女長の永瀬は、正しく宗谷の犬だった。
宗谷のいない全ての時間のことを、逐一報告される。
行動は管理され、あたしは縛られる。

ひと月たっても、パパとママの行方は解らない。
「お利口にしていれば会わせてあげるよ」
行方を問う度に、宗谷が答える。
パパとママは、あたしが逃げ出さないようにする為の人質。

あたしが、ほんの少しだけ、ホッと出来るのは
蝶が飛び交う、この温室だけ。
広い広い空間には、大小様々な蝶々が飛び交っている、
色とりどりの蝶々が‥ 佇んだあたしの身体に、止まる。
温室の中には、東屋がある‥この所の、宗谷のお気に入りの場所だ。
だからなのだろう、この温室の中であたしが一人で居ても嫌がらないのは。
いつ如何なる時も、宗谷を意識していれば、あの男は満足なのだ。
憎もうが、嫌おうが、構わないのだ。

温室の中には、様々な花が咲き乱れている。ヤシやハイビスカス、亜熱帯地方の植物が栽培され
起伏に飛んだ環境の中には、歩道に沿わせて、小川が流れている。
この規模の温室を、よくこの短時間の間で作ったものだと感心する。

正しく、世の中は、お金と権力で回っているのだろう。



せせらぎの音に、耳を傾けながら長椅子に腰かけ、しばし微睡む。
あたしの周りを蝶々が舞う。美しい美しい蝶々が舞う。

指先を出して、じっとする。ひらひらと蝶があたしの指先に止まる。
今は未だ、一代目の蝶々が舞い踊っているけれど、
やがてここで生まれ、ここしか知らない蝶々が生まれるのだろう。


天敵のいない守られた空間で、ぬくぬくと過ごすのだろう。
だけど蝶々達は,本当の空を知らない。
本当の風を知らない。本当の‥

知らなければ、知らないで幸せかもしれない。

「ふぅっー」
時計を見ると、4時を指している。もうじき永瀬が呼びに来るのだろう。
東屋は、みないようにして、もうしばらくだけ、ここで微睡もう。
全てを忘れて‥微睡もう。

誰かが、あたしを呼ぶ声がする。顔が見えない。だけどそれはとても甘美な声。
「司‥」
自分の声に驚いて、目を覚ます。
あたりを見回し、安堵する。誰も居ない事に安堵して、そっと涙を拭う。

「会いたいなぁ‥」声に出して言ってみる。
己の心が傷ついて血を流すけだとしても、会いたいと願っていた。

気の抜けてしまった、炭酸水を飲む。
はじけれていれば、炭酸だけど、はじけなければ、これは何なのかしら?そんな事を考えながら‥

「つくし様、そろそろお時間でございます。」
声がして後ろを振り向くと、永瀬が立っている。
音も無く、やってくる。
「今、参ります」
束の間の自由は、終わりを告げていた。





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