紅蓮 43 つかつく
「妻を二度目に見つけたのは、西門の茶会でしてね」
二度目に見つけた?
総二郎が
「宗谷様と、つくし様は、西門で出会ったのが最初では無かったのですか?」
「えぇ、妻自身は、一度目の出会いを知りませんがね」
妖艶な笑みを浮かべながら、
彼女しかいないと運命を感じたと。
何が可笑しいのか、くすりと笑いながら,言葉を返している。
「妻と言えば‥」
温室を新設したのだと、言う。
「彼女が、雑事以外の大半の時間を過ごす場所なんでよ。宜しければご覧になられませんか?」
そんな風に聞いてくる。
抗えるワケもなく‥ 宗谷氏の案内の元、後ろを付いていく。
指紋認証で、温室の扉が開く
「先ほどの、蝶はここからすり抜けてしまったんでしょうね。外界に出た所で、この季節死が待っているだけなのに‥」
3重になった扉を入っていく。
灯りが点けられる。ムワッとする熱さと共に、目の前に広がったのは、まるで異空間だ。
南国の花々が咲き乱れ、小川が流れ、蝶が飛び舞う。
「ここの空間が、目下の妻のお気に入りでしてね」
総二郎が、あんぐりと口を開け
「先日、お邪魔させて頂いた時には、無かったように感じるのですが」
「えぇ、あの後になりますかね‥珍しく、妻がおねだりをしてきまして‥それが蝶だったんですよ」
嬉しそうに、顔を綻ばせ語る。
「短期間で、よくここまでのものを‥」
総二郎が、そう問えば
「妻が喜ぶものならば、与えてあげたいと思いましてね」
与える? 叶えるではなく与える? どことなく違和感を感じる言葉に寒気を感じ
「与えるですか?」
つい、そんな事を口走っていた。総二郎が慌てた様子になっている。
「えぇ、妻の本当の望みは、私には叶えてあげれませんからね。ならば、少しでも興味がひくものがあれば、与えたいと思っているのですよ」
俺に向き直り、そう告げる。
「道明寺さんの時は、何か欲しがりましたか?」
蝶を手にとまらせて、男が俺に問うてくる。
「失礼。愚問でしたな‥どうか、お忘れください」
しばしの無言の後‥‥
「つくしが、喜びますので、どうぞ、また遊びにいらしゃって下さいね」
見惚れる程の怪しい微笑みを投げてくる。
「困ったもので妻は、蝶のように、鳥のように、この屋敷から飛び立つ事ばかりを考えているのですよ。道明寺さんがここに遊びに来て下されば、そんな気持ちも少し和らぐかも知れませんからね」
「飛び立ちたいですか?」
「ええっ。宗谷の妻として、どうしても制約が多くなりますからね。一般の家庭から嫁いだ身としては、至極当たり前かも知れませんがね」
煌々と灯りの灯った温室の中を、昼間と間違えた蝶が舞う。ひらひら、ひらひら、ひらひらと‥
男は、言葉を続ける。
「妻は、つくしは、まだ知らないのですよ。外の世界よりも、ここの世界の方が彼女にとっては幸せだという事を」
小川のせせらぎの音が、聞こえる。
***
温室の灯りが消え半刻ほど経った頃、上機嫌な宗谷が部屋に戻ってくる。
ハミングでも口ずさみそうな雰囲気だ。
目を瞑り寝たふりをしているあたしの隣に潜り込んでくる。
あたしの全身を愛撫し始める。
セックスをしない時にでも‥執拗に執拗に愛撫を受ける。
まるで、愛おしくて堪らないと言うように。
「道明寺さんが、まだ忘れられないかい?」
耳たぶを軽く噛みながら、宗谷が囁く。
あたしは、目を瞑り聞こえないふりをする。
「今日は、お帰りいただいたが、今度は道明寺さん達にも、泊まって頂こうね」
宗谷の指が、胸元のピアスを弄っている。
あたしは、この男が嫌い。
刹那‥
強く、強く口づけをされる。
息ができない程の口づけを。
あたしは、心を殺し‥伽藍堂の木偶になる。
「つくし‥‥つくし‥‥」
宗谷が、あたしの名を呼ぶ。
あたしは、目を開け、宗谷を睨む。
宗谷は、嬉しそうに
「私の事を、愛さないのなら、憎め。そう、心の底から憎めばいいさ。憎めば憎む程、君の体はもっともっと快楽を得られるよ」
体の奥から、劣情が襲ってくる。
あたしは、地の底に堕ちていく。
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