紅蓮 47 つかつく
あたしの心が、宗谷を憎めば憎む程‥快楽の海に漂うのだ。
憎んでいるのか、何なのか解らなくなる程に、快楽に溺れる。
自分で自分が解らなくなる‥
憎んでいるのに、感じてしまう。
いっそ、愛せたら楽なのかもしれない‥
時折、そんな思いが去来する。
逃げれないのなら、愛してしまえば楽なのだろう。
だけど未来永劫‥
あたしの心は、司しか求めない。
あの日から‥
宗谷は、あたしを至る所に連れ回すようになった。
今まで、あまり意識せずにやってこれた立場を、その度に意識させられる。
”牧野つくし” では無く ”宗谷つくし” としての立場。
瞬く間に、宗谷のあたしに対する深い執着は浸透を始める。
周りの者が、宗谷つくし としてのあたしを、認識していく。
逃げられない‥
あたしの自由は、雁字搦めだ。
あたしの身体と同様に、
ベッドをそろりと抜け出して‥
自分の身体を抱きしめながら、窓辺に立って庭を見る。
あの日から‥
自らの意思で行かなくなった、温室を見る。
蝶々が舞踊る温室で、司は何を思ったのだろう?
獣のようなあたしを見て‥
あきれた?
醜い身体を見て‥
蔑んだ?
アイシテル アイシテル アイシテル
だから‥どうかお願いです。
あたしを嫌わないでください。
突然、大きな影に抱きすくめられる。
苦しいほどに、力を込めて抱きしめてくる。
胸元から手を入れられて、胸元のピアスを弄られる。
変わってしまった、あたしの身体を思い知らせられる。
**
あの日から、何度も何度も夢に見る
再び手に入れたいと願った女の夢を。
真っ白い裸体‥縛られた手首‥喘ぐ顔‥
獣のように、男を求める美しい女の姿
アイシテル アイシテル アイシテル
つくしにしか、感じないこの思い。
沸き上がる‥‥心の底からコンコンと、沸き上がる。
枯れる事をしらない泉のような、この思い‥
窓を眺め、月を見る。青く輝く月を見る。
妖しく揺らめく光を感じる。
生きる意味‥
俺の生きる意味は、つくしにしかない。
エゴ?
エゴかもしれない‥自分の思いだけを貫く事は‥
だけど‥
俺は、お前を諦められない。
RRRRR
闇を切る音がする‥
『はい‥』
頼んでいた報告書が上がってきたようだ。
『迷惑かけたな。ありがとう』
礼を言って、電話を切る。
パソコンを起動させ、伝えられたパスワードを入力させて
データーを受け取る。
愕然としながら‥データーを読む。
道明寺HDの躓きは、全て仕組まれていた事を知る。
ククッ‥ハハッ‥
渇いた笑いが、腹の底から沸き上がっていく。
遠慮はいらねぇ‥‥
俺は、つくしを取り戻す。
あぁ
奪われたものを、奪い返す‥ただ、それだけだの事だ。
全てを失う事になったとしても?
俺の全ては‥
つくしと、別れを決めたあの日にもう既に失った。
だから
全てを取り戻す‥他のものはイラネェよ
電源を落とし、
もう一度、月を見る‥
つくしを思い、月を見る。


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
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