明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

紅蓮 48  つかつく

情念‥あたしがあたしでいられるのは、情念を持ち続け生きているからだ。

逆に、この情念があるから‥あたしは苦しいのかもしれない‥


伽藍堂で生きて来たときも‥
たった一つの情念だけは、捨てられずに生きて来た


司を思う情念‥ 浅ましい程に司を求めてしまう‥
宗谷のあたしに対する愛が、狂愛ならば‥

あたしの司への愛もまた、狂愛だ。



「お前は、俺の十分の一も俺を愛してねぇよな」
司が、あたしに向かって投げた言葉‥

違う、あたしの気持ちの百分の一も司に見せていなかっただけだ。

いつだって、あたしだけのものにしたかった。

蜘蛛が性交の時に、愛する男を喰らうように‥

      あたしだけのもにしたかった


あんたは、知らない。
どれだけ、あたしが司に執着したか、しているか‥




「つくし奥様」
永瀬が、お稽古の時間だと呼びにくる。

「はい‥ただいま参ります」


回り廊下から、表を眺めると‥
温室だけではなく、外の世界でも蝶々が舞い始めているのが見える。


日の光を受けて、飛び交う様は美しい‥
悲しい程に、美しい。


飛び交う蝶々を見ていたら‥

「永瀬」
「はい。奥様‥何用でございましょう」

「永瀬は、誰かを死ぬ程に、愛した事はある?」
そう問うていた。

永瀬の答えを聞きたいわけではない。

あたしは言の葉を外に出す。


「うふふっ、あたしはあるわ‥うふふっ今でも、しているわ」

誰とは言わずに、あたしは語る‥

なぜ‥永瀬にこんな話をしているのだろう‥

これ以上、狂わないように? 

いいえ、もう既に狂っているから?


あたしは、司への思いを外に出す。


「つくし奥様の愛は実られておりますし、これからもずっと続いて参ります」

「うふふっ、それならば嬉しいわ」

あたしは、ニッコリと微笑む。


永瀬は、宗谷の事を思い浮かべ、
あたしは、司を思い浮かべる。



***

温室に行く日課がなくなってしまったあたしは、竹林で午後のひと時を過ごす。
ざわざわざわ と竹が風に揺られている。

木漏れ日が、風に揺られている。
深い深い、海の中にいるような錯覚に陥る‥


そして‥ふいに思い出す‥‥

「自由って良いわね‥」
美しい声が呟いた言葉を‥


あたしは、思い出す。

あの時、あたしは彼女になんて返事をしたんだろう?
美しい声だった。


「つくし奥様、そろそろ遊宴のご用意を」
侍女があたしを呼びにくる。

侍女達の手によって、美しい愛玩人形に、磨き立てられていく。
贅を纏ったあたしは、空っぽなのに‥世の中の女性の羨望を受けるのだ。
滑稽な事だと思う。

「お美しゅうございます」
口々に、侍女達が褒め称え、永瀬が満足げに微笑んでいる。

鏡の中には、あたしではないあたしが、映っている。
艶やかに、美しい人形が映っている。


刹那‥
一番滑稽なのは、他でもないあたしだと思い知る。





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7 Comments

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2016/05/29 (Sun) 22:21 | EDIT | REPLY |   

にこ(asuhana)  

さとぴょん様

ちがうちがう

2016/05/27 (Fri) 19:51 | EDIT | REPLY |   

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2016/05/27 (Fri) 15:10 | EDIT | REPLY |   

にこ  

Kachiさま

普通って、なかなか奥が深いもんですなぁ~
ムフッ
子供に感情を揺さぶられる…何処もですね

2016/05/26 (Thu) 07:39 | EDIT | REPLY |   

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2016/05/25 (Wed) 23:12 | EDIT | REPLY |   

にこ(asuhana)  

yukikoさま

みんな、どこか狂ってるんですかね
愛し過ぎると、どこかにひずみが出てくる感じでしょうか

2016/05/25 (Wed) 20:01 | EDIT | REPLY |   

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2016/05/25 (Wed) 18:08 | EDIT | REPLY |   

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