紅蓮 51R つかつく
あの夜から始まった責め苦‥‥いつ終えるとも解らない‥
抜け出したい‥助けて‥
「‥お願い‥許し‥て‥‥いやぁっーー」
いくら叫ぼうが、助けなど来はしない。それなのに、天に向かって助けを叫ぶ。
下卑た笑いを浮かべた男に、私は鞭を打たれる。
愛する人を思い浮かべ、助けを求める。
決して叶わぬ、いいえ決して叶えてはいけない相手を思って‥
「美繭‥なんて美しい‥」
男の鞭が飛ぶ‥痛めつけられ、身体を貫かれる。
「おじ‥い‥様‥‥お‥ね‥がい‥もう許して」
何度叫んだろう‥この言葉を。
私は、心を殺して木偶になる。身体を貫かれて、木偶になる。
それなのに‥‥目の前の男の手によって、私の身体は幾度も幾度も絶頂を迎える。
嫌なのに、身体が熱くなり、トロトロと蜜が流れ出す。
「美繭‥放しはしない‥お前は、生涯儂のものじゃ」
宗谷龍之介、戸籍上は祖父になる人物‥あの日まで、凌さんと一緒に、可愛がって育ててもらった。実の孫のように‥
それなのに‥‥
「‥あっ‥あぁ‥あぁぁーー‥うっ‥」
夜通し、あらぬ限りの痴態が繰り広げられる。
***
少し開けた窓から、雨の匂いが漂っている‥
「つくし奥様」
永瀬の言葉に振り向くと、心配顔をしてあたしを見ている。
「起き上がれますか?」
「ええっ‥」
背が痛む‥‥
執拗に執拗に、昨日は責め苦を受け続けた。
6月19日‥ この日が美繭さんの命日なのだろうか?
多分そうなのだろう‥
「永瀬‥湯浴みは、しばらく一人でさせてもらえない?」
「それは‥‥」
永瀬が答えに言い澱んでいる。
何故、そんなにも一人でお風呂に入ってはいけないのかしら?
そんな事が頭を過る。
「なら、しばらく湯浴みは永瀬だけが手伝って頂戴」
「もう少し、休ませて貰っても大丈夫かしら?」
「今日の予定は、全てキャンセルだと凌様には伺っております」
「そう‥ならもう少し寝させてもらってもいいかしら?」
永瀬が部屋を出て行く。
部屋の中には、雨の匂いとあたしだけが、取り残される。
心も身体も暫しの休息だ。深い深い眠りに落ちていく。
どの位の時間眠っていたのだろう‥視線を感じて薄らと目を覚ます。
あたしが、目を覚ましたのに気がつかないで‥二階堂があたしを見ていた。
いつもの二階堂とは違う‥視線を感じる。
温もりを感じる視線‥
次の瞬間、二階堂の口から言葉が漏れた。
「美繭様‥‥」
自分が放った言葉に驚いたように、唇を噛み締めてそっと部屋を出て行った。
美繭さん‥どんな方だったんだろう?
あたしの意識は、会った事のない美繭さんを思い浮かべる。
刹那‥
海を見ていた女性が頭に浮かぶ‥
そんな偶然あるわけないと、首を振る。
だけど‥あの夏‥出会った女性があたしの心に浮かんで消えない。
顔には靄がかかったままなのに‥鮮明に、彼女の声を覚えてる。
綺麗な声だった。。
「自由って良いわね‥」
そう哀しげに呟いた声が蘇る。
あの時、彼女とあたしと海と‥そして、彼女から離れた所に、見張りの人間が幾人か居たんだ。
決して逃げれないように‥幾人かの見張りが。
彼女も、今のあたしと同じ囚われの人だったんだ。
「自由‥っていいわよね‥」
言の葉に乗せてみる。
あたしは、立ち上がり‥自室のバスルームの扉を開ける。
カチャリッ
開かないと思っていた扉が開く。
鍵を掛け、シャワーを浴びる。
背の傷は痛むけど‥あたしは自由の羽根を伸ばしていた。
宗谷の帰宅を告げる鈴がなる。
シャラーン シャラーン と大きな鈴の音が、屋敷の中に響き渡る。
身体を流す水音で、鈴の音が聞こえなかった。
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