紅蓮 54 つかつく
幾つの夜、こうして過ごしてきたのだろう。
此れから幾つの夜、こんな日を過ごすのだろう。
悲しさと快楽が混ざり合い…私は、虚無になる。
幸せだった幼い頃を思い浮かべる。
世の中は、美しいもので満ち溢れていた。
汚れてしまった身体、穢れてしまった心を抱きしめながら、快楽に堕ちていく。
「美繭…美しい…美繭…」
いっそ醜くなればいい。そう願う。
なのに…着飾られ、磨き上げられ、快楽に狂い…美しく華開いていく。
**
「自由をください…」
私は、願う…
海を低く飛ぶ燕を見ながら、そう願っていた。
麦わら帽子が、私の前に風に押されて転がってきた。
手に取り、辺りを見回すと…
「すみませーん」
いつかの私が笑ってる。
ううん違う、弾けそうな笑顔で、少女が私に笑ってた。
「はい…どうぞ。急に風が強くなったものね」
「助かりましたー もう、あっちの浜辺からずっと追いかけてきちゃいました。掴まえた!そう思っても掴む前に逃げちゃうんですよねー、もうビックリ」
少女は、自然に私の横に腰掛けながら
「明日、雨なんですかね?」
「燕が、低くとんでるものね」
良く笑う少女と2人で、他愛も無い事を2人で話す。
久しぶりに交わす、邸のものと以外の会話は楽しくて楽しくて‥
思わず声をあげて笑っていた。
彼女の周りは、温かい光で満ちている。
この光は、これからの人生誰を照らし、誰と共に生きて行くのだろう。
そんな事が、脳裏を過る。
「‥‥まー‥‥み‥」
遠くで、私を呼ぶ声がする。
少女が立ち上がり、お尻を叩いて砂を落とす。
「いつも、この位の時間にお散歩ですか?」
「えぇ」
「じゃぁ、また来ますね」
少女が、そう言い残し手を振り去って行く。
少女の背中を見つめながら、私は現実に引き戻されていく。
燕が、低く低く八の字描いて、空を舞っている‥
きっと明日は雨が降る。
*****
愛して欲しいと懇願されて、あたしは戸惑う。
目の前の男を愛せと言うのか?
戸惑うあたしに‥宗谷は笑った‥
「いつもそうだ‥本当に欲しいものは‥何一つ手には入らない‥」
あたしを押し倒す。
全身を宗谷の舌が、這いずり回る。
「嘘でも、俺を愛していると言ってみろ」
そう言いながら、乱暴にあたしを抱く。
妄語を吐けばいい‥そう思うのに‥
身体を渡しても、この心は渡せない。
あたしの心は、司しか求めていないから。
あたしの中に、精を出したあと‥
「山下は、この邸ではなく、お婆様の所に行ってもらう事にしたからね」
事も無げに、そう言って薄く笑った。
「もう、つくしの身体も傷つけはしないよ。
君には、これから子を宿してもらわなければいけないからね」
コヲヤドス‥‥
ダレガ‥
ダレノコヲ‥?
宗谷の薄い唇が、醜く歪んでいる。
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