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ふぅっーー いい汗かいたぁ~
「牧ちゃーん お茶してくぅ?」
「お茶より、ビールでグイッとがいいなぁ~」
「おっ、いいねぇ~カーコ達も誘っちゃおうか?」
「カーコ、ダイエット中とか言ってなかった?」
「まぁまぁ、それはそれ。今日はいい汗かいたし大丈夫っしょ。」
更衣室で着替えながら、片手をクイッとさせて、千ちゃんが
「どうよ?」
カーコと友ちゃんに声を掛けた。
「行く行く~、ぐふっ、実はさぁ、千ちゃんと、牧ちゃん誘おうと思ってたとこなのよ。」
「うふっ ダイエットは?」
「今日はおやすみ〜」
貧乏克服!をスローガンに、在学中に税理士の資格をとったあたしは、無事に大手のアローンに就職する事が出来た。就職して、6年。中々優秀だと自負してる。って、まぁクビにならない程度にはね。
こんな風に、同期の友達とスポーツクラブに通って、その後飲みに行くなんて生活を無理なく送れているのは、堅実な職業を選んだお陰だ。
うーーーーん 幸せ。 そうコレが平凡な幸せ。
ちょっと特殊な高校時代を過ごしてしまったけど、今はこうして、地に足のしっかりついた生活をしている。
まぁなんて言うんですかねぇ〜 幸せなことです。はい。
「ねぇ、ねぇ、そう言えば、HANAが顧客につくかどうかなんだって?」
「へぇ〜 HANAって、一昨年上場したんだよね?」
「課長が、牧ちゃん担当にするって言ってたよ。」
「凄いじゃん。牧ちゃんやるぅ〜」
「さすが、牧ちゃん♪やっぱ優秀だよね〜」
「そ、そ、そんな事ないよ。」
HANAかぁ、確か‥ここ数年でグングン業績伸ばした会社だったよね?
ここって、親会社とかあるのかな?
ところで、担当があたしだとして、何であたしの前にカーコが知ってんの?
「ねぇ、カーコなんで知ってるの?」
「ほら、それはさぁ〜ねぇ」
「課長とカーコの仲だからでしょうが」
えっ? カーコと課長の仲?
「じつはね、田所課長と5月に結婚決まりましたー」
「やっぱねぇ〜」
「中々言わないんだもんね」
「って、牧ちゃん、牧ちゃん?」
えっ、カーコと田所課長??? えっ、ええぇーーーーえぇえーーーー
「マジ?」
「って、全然気が付いてなかった?」
ひゃぁーーー マイッタ。カーコに課長の事、スケコマシだ、仕事の鬼だーとか愚痴ってた‥よね??
許せ〜 許せ! カーコ
「うん。」
「やっぱり、そうだと思った。」
「おめでとう〜 もう今日は、カーコの分奢らせてもらう」
「やりぃ〜」
あぁー、やっぱりあたしって‥‥ 色恋には鈍感???に、出来てる??
ぅぷっ
「でね、こうちゃん忙しい訳よ。これから」
おっ、いきなりこうちゃんと来たかぁ〜
「でね、牧ちゃんにHANAお願いしようって。代表と話したみたいだよ〜明日あたり代表から話しある筈だよ。あっ、まだ内緒ね」
「了解。」
おぉ〜 なんだか色々な情報入ってきて、いい気分だわ。なんてほろ酔い気分になったあたし。
「そうそう、HANAって社長交代するんだよねー」
友ちゃんが、最後にポツリと呟いてたのを、聞いた気がしたけど、すっかり記憶の彼方だった
**
「牧野、ちょっと」
田所課長があたしを手招きする。
カーコが、ウィンクしてる。
「はーい。」
HANAの担当になる旨を田所課長から話される。
「でな、急遽で申し訳ないんだけど、相手側が担当と顔合わせの会食したいと言ってきてるんだ。あとの仕事は、他の奴らでまわすから、5時半に赤坂の雪に宜しく頼むわ。頑張って本契約とって来い。」
雪 ですかぁーーー まぁ、何とも豪華な。
「茜代表もですか?」
「あぁ、そうだ。」
「了解です。」
茜代表は、そんじょそこらの男よりカッコ良い。あたしの憧れのアローンの取締役だ。
会計士、税理士の資格を有し、コンサルティングとして活躍している。
茜代表と一緒に仕事出来るなんて、嬉しいなぁ〜なんて舞い上がったり、他の仕事に追われたりで、課長に貰った資料に目を通したのは、出掛ける30分前だった。 取りあえず、企業としての業績を見ていて、すっかり新社長についてのページを読み落としていたのは、痛恨のミスだった。
茜代表と共に、迎えの車に乗り込む。
「いつも思うけど、牧野は高級車、乗り馴れてるよねぇ〜」
「そ、そ、そんな事ないですよ。」
「ううん。そんな事あるわよ。会食もどこに連れて行ってもキョロキョロしないしね。」
「あははっ、内心はキョロキョロしっ放しですよ‥」
「そう?なんか慣れてる感じだけどねー 雪は、初めて?」
「あっ、はい。」
およよ‥ 茜代表‥鋭いんだよね。
料亭 雪 に着く。流石、女将‥素知らぬふりをしてくれる。
って、キョロキョロでもしてみる?って、それも変よね。
仲居さんに案内され、部屋に通される。
おっ、上客様用のお部屋だ。へぇ〜
「あらっ、ここ来た事あった?」
「いえいえ。はじめてです。」
「そう。それにしては感激薄い?」
「驚いて無口になってるだけです。」
佐伯さんがチラッとあたしを見る。
だけど、雪の仲居頭‥これまた素知らぬ振りをしてくれる。
ふぅっーー ここに来るの、何年ぶりになるのだろう?
類と会わなくなってからだから、かれこれ3年?ううん4年になるのかな?
相変わらず格調高いなぁー
類‥元気にしてる‥‥ かな?
ううん。あたしにこんな事思う資格なんてないよね。
「お連れ様がお着きになりました。」
佐伯さんが、チラッとあたしを見た気がした。
ガラッと襖が開かれる‥
あたし達は立ち上がり、挨拶の準備をする。
「お待たせ致しました。」
懐かしい香りが鼻をくすぐる。声のした後ろを見ると‥ る、る、類が居た。
「アローン代表取締役の茜里美と申します。私と一緒に御社を担当させて頂く」
「牧野つくしと申します。」
類が、ニコリと微笑む。
薄茶色の瞳も、瞳と一緒の色素の薄い髪の毛も‥手を伸ばせば触れられる位置にある‥
やっぱり、この男は綺麗だな。そう思う。
だ、だ、だけど なぜココにいるの?
「HANAの新代表の花沢類です。宜しく。って、牧野さんって高校、英徳じゃなかったですか?」
ぐえっ、そう来ましたか‥ 笑っていくしかないよね。
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