はじめてみよう 4 類つく
心が動いたら、類が欲しくなるから。
お願いだから‥
もうこれ以上、あたしの心にずかずか入り込まないで‥
この4年、あたしは、必死にあなたを追い出してきたんだから。
「牧野さん、牧野さん」
氏原さんが、あたしの名を呼ぶ。
「あっ、はい。すみません。」
「いえいえ。あのですね、花沢社長からコレを見て、纏めておくようにと」
「あっ、はい。」
資料を見ながら、書き込みをしていく。
中々面白い‥引きずり込まれるように、資料を捲る。
PCで、資料を纏めていく。
「ふぅっー」
一息吐こうと顔を上げたら、いつの間にか戻っていた類があたしを見てた。
「前にもまして、凄い集中力だね。」
「す、すみません。お帰りにも気付かずに‥」
「別に構わない。出来上がった所まで見せてもらっていい?」
「あっ、プリントアウトすれば、完了ですので、今お渡ししますね。」
「っん。お願い。」
類があたしに、珈琲を手渡してくれる。
「ありがとうございます。」
「っふ、牧野はさぁー、この前から、随分と他人行儀だよね?」
「HANAの社長と秘書の関係ですから‥」
「ふーん。そうなんだ。だったら、業務命令はしっかり聞くって事だよね?」
「社長秘書の範囲でしたら‥」
「ふーん。じゃぁ、今日の会食は、牧野が同伴ね。」
片頬をあげて類が笑う。
出来上がった資料に目を通しながら
「ふーん。牧野って、優秀なんだね。アローンに吹っかけられるわけだ。」
そう言いながら、纏めた資料に対しての疑問点や、問題点を聞いてくる。
「うん。よく出来てるよ。にしても、あんた仕事早いね。」
満足げに、椅子をくるりと回す。
まぁ、あたしとて人の子だ。相手が良からぬ事を企んでいても、褒められれば悪い気はしない。
「くくっ、相変わらず鼻の穴が広がるね。」
肩を震わせ笑う男。
氏原さんが、不思議なものを見る目で、類を見て、それからあたしを見た。
そっか、普段この人笑わないもんね。
でも‥一度笑い出すと‥しつこい位に笑うんだよね。
寝坊助で、寝起きは赤ちゃんみたいで...
テレビ小僧で、案外お笑い好きで...
優しくて、優しくて...
いけない。いけない。あたしは決めたんだ。
身分違いの恋は、もうしないって。
司の時みたいな辛い恋は、もうしないって。
あたしの人生に最上の幸せは、もういらない。
それなりの暮らし。それなりの幸せ。それがあれば充分だ。うん。充分だ。
会食に、出掛ける前にLINEを入れる
10時に、フォレスト前に緊急出動 恋人のふり、よろしく♡
既読がついて、返信が入る。
姉さん、了解っす。アンード この前は、助かりました。って、これでフィフ?
まだ10回くらい貸しがあるよ。
(゚△゚;ノ)ノ
ヨシ。準備OK

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