ひらりひらひら‥桜が舞い降りて
「舞ちゃん、しゃくりゃじゃないよ、さ、く、ら」
「しゃ、く、りゃ ?」
「ううーん、サクラだよ。桜。にぃにのさくに、らをつけるんだよ。」
咲が、舞に一生懸命、教えている。
「しゃくでしゅ。」
舞は、得意気に言い切って、類を見つけて、走っていく。
「パパ~ しゃくりゃでしゅぅよー」
「まいちゃん、だからサクラだよ。サクラ。」
咲が、舞を追いかけながら、言葉を訂正してる。
類は、目を細めて2人を見つめる。
舞が類に、飛び込む。咲も、まけじに類に飛び込む。
両の手で、類が二人を抱きしめる。
愛おしく愛おしくて堪らない顔をして。
あたしは、両の手を広げて、桜の花びらを掴む。
ひらりひらひら舞う花びらを、両の手いっぱいに掴もうと。
咲と、舞も駆け寄ってきて、3人で両の手を広げる。空に向って両の手を広げる。
「口に入っちゃうよ」
類が笑って、あたし達3人を揶揄う。
桜の下で思い出す。幸せな物語を。
たった半日の恋人時代を。
**
「やっと掴まえた。はい、手出して。」
そう言われて 両手の平を上に向けだしたら
くくっ、くくっ笑いながら
「あんた、成長なさ過ぎ‥」そう言いながら、左手を掴まれて‥
左手薬指に、優しいキスが降りてきて、あたしの左手薬指に、桜の花が咲いた。
あたしの指に桜が舞い降りてきた。
桜色した綺麗な宝石が。
あたしは、うっとりとうっとりと眺める。
あの日、掴めなかった花びらがあたしの指を彩ってくれてる様で嬉しくって。
「ねぇ牧野、今日は、何の日か知ってる?」
「知ってるよ、今日は類の誕生日だよね。」
「あのさぁ、俺プレゼントが欲しいんだ。」
「なにが欲しいの?どーんと言って。」
今のあたしは、これでもいっぱしの社会人。
ちょっとくらい値の張るものでも買えるんだから~エッヘン!と張り切って答える。
あたしの耳許で類が囁く
「牧野が、ううん‥つくしが欲しい」
あたしは、コクンと頷いた。
類は、あたしの手を取ると‥
駐車していた車に戻る。 ヒャッ、る、る、類の運転?
ちょっぴりドキドキしたけれど、7年の歳月の間にすっかり運転が上達していて、安心したけれど、それが会えなかった月日を象徴しているようで、ちょっぴりだけ哀しくて、下を向いたら
「うーん。そうだな。7年離れてたから、これから7年は一日たりとも離れない。どう?」そんな風に類が言う。
「うん。離れない。」
そう言って、連れて行かれたのが。メープルTOKYO
瞬く間に、バスにぶち込まれ、泡泡状態になったかと思ったら、全身を磨かれて‥
メイクを施され、髪の毛をセットされ、純白の衣装に身を包み‥
桜の生花で作られた、クラッチブーケを渡される。
パパとママが部屋に入って来る。
「つくし、久しぶり。おめでとう」
「綺麗だなぁー 本当につくしは綺麗だなぁー」
「あっ、花嫁さんは泣いちゃダメよ。それじゃなくたって、あちとら、王子様の様なハンサムなんだから。お株とられちゃうわよ。」
ママが泣き笑いの顔をしてそう言う。
「うんうん。そうだ。そうだ。」
真っ赤に、目を腫らしながら、パパが大きく頷く。
「お嫁様、もうそろそろ…」介添人の方にそう声をかけられ、チャペルに向う。
パパと2人でバージンロードを歩く。
クラッチブーケの桜が、ひらりひらひら舞い落ちる。
幸せのお裾分けとばかりに舞い落ちる。
桜子が、滋さんが、優紀が、百合亜が、道明寺が、西門さんが、美作さんが、皆が居る‥
進とママ、それに 類のお父様と‥あ、あ、あれ?万葉さんがいる。茶目っ気たっぷりに笑いながら、小さくピースサインをしてくれる。
あたしの双眼からは、涙が零れる‥
パパの手から、類の手に‥
誓いの言葉、そして キスをする。熱い熱いキスをする。
桜の花びらがあたしの全身に降り注ぐ。髪にドレスに降り注ぐ。
類の耳許であたしは、あの日言えなかった言葉を囁く
「類が好き」
類があたしを抱きかかえる。
両親と親しい仲間と共に、食事をする。和気藹々と。
万葉さんが、微笑みながら
「つくしちゃん ありがとう。」その言葉に、あたしの涙腺は崩壊する
類がじろりと万葉さんを睨む
「母さん、つくしを泣かせないで」
皆が、一斉に笑い出す。
笑いが、幸せが、広がっていく。
桜が舞い降りるように、たくさんの幸せが広がっていく。
幸せひらりひらひら舞い降りる。あたしの心に舞い降りる
幸せひらりひらひら舞い降りる。類の心に舞い降りる
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