桜、サクラ、さ、く、ら‥
” 元気だよ ” そう言葉が添えられいる。
文字を指でそっと撫でて、目を瞑りあの日を思い出す
**
牧野が手を伸ばしている。目一杯手を伸ばし花びらを掴もうとしている。
「ね、ね、見て見て、ほらぁー 綺麗だね」
綺麗なのは、桜の花びらよりも、牧野あんただよ。そう何度も口をついて出そうになる。
言葉を呑み込む為に、俺も手を伸ばし、牧野の頭上で桜の花びらを掴む。
「はい。」牧野に渡す。
嬉しそうに微笑む牧野の笑顔が見たくって、もう1枚キャッチする。
「はい。」そう言って牧野に手渡す。
「綺麗。」
あんたがそう言う。
「あぁ綺麗だね」
俺は答える。
俺の綺麗は、牧野あんたへの言葉。
このキラキラとした時間がいつまでも続けばいいと願っていた。
だけど‥牧野は、司を追ってNYに飛び立つ。
俺はそれに耐えきれず、伸ばしに伸ばしたフランス行きを了解した。
あんたのいない日本なんて興味ないからね。
牧野が、突然走り出す。突拍子の無い仕草は出会ってから6年間変わんないね。あんたを見るたびに、俺はドキドキワクワクする。世の中に色がつく。
後を追いかけ歩く。
桜の木の下で、必死に花びらをとろうとしている牧野。
手を伸ばせば、触れられる距離にいる。
手を伸ばせば抱きしめられる距離にいる。
それなのに拒絶が怖くて、俺はあんたに手を出せない。
いっそ思い切り振られてしまえばいいのかもしれない。
いっそ粉々に砕け散ればいいのかもしれない。
だけど‥俺はあんたを思い切れない。
ずっとずっと思い切れないのなら、せめてあんたを愛し続けていたい。
だから、俺は手を出せない。
牧野が上を見上げて、桜の花びらを掴もうとしてる。
その様が可愛くて、可愛くて、あぁー俺は一生この光景を忘れられないんだろうなと思いながら
「牧野、口に入っちゃうよ」そう言って笑う。
ひと月近く言えなかった言葉を口にする。
「俺、フランス行きが決まった。」
あんたの顔を見たら言えなくなってしまいそうで
後ろ姿に向けて口にする。
「そうなんだ‥」
あんたは、前を向いたまま返事する。
「うん。明日立つ。」
牧野が振り向き
「あたしも、明日までなんだ。」
「そうなんだ。司待ってるね。」
「うん。だから送りにはいけないね。ここでお別れだね。」
大きな笑顔で、牧野が笑う。
俺の大好きな大きな笑顔で牧野が笑う。
その笑顔をあんたにさせているのは、NYで待つ司だよね?
ズキンと胸が痛む。
俺、やっぱりあんたが好きだ‥そう言って抱きしめてしまいたい。そんな衝動に駆られる
「牧野‥」
牧野に声をかける‥
刹那‥ タイムアウトとばかりに田村が俺を迎えにくる。
牧野が俺に手を振る。大きく大きく手を振る。
俺は言葉を呑み込んで、片手をあげる。
あの日から7年。
あんたは頑張ってNYで暮らしている。
牧野あんたの口から、司の口から、惚気話を聞きたくなくて‥
俺はあんたらと会わないし、電話もしない。
時折‥無性にあんたが恋しくなって便りを出す。
自分を戒めるために、この便りは友人としての便りなんだよと強調する為に
” 司によろしく ” そう添える。
牧野からの絵葉書は、俺の宝物だ。
あんたを思って、青空を見る。
ねぇ、牧野‥フランスの桜は、ソメイヨシノじゃないんだよ。
濃いピンク色の二重桜なんだよ。
牧野の住むNYと同じで、東京の俺等のみてた桜よりも1月近く遅く咲き出すんだよ。
牧野と一緒に、あぁじゃないこうじゃないって語りたいなぁ。
あの日、牧野を抱きしめる事が出来てたら俺の人生何かが変わってた?
俺は、首を振る。愛が無ければなにも生まれないさと。
でも‥‥俺、牧野に会いたいなぁー
胸は痛むかもしんないけど、ドキドキワクワクしたいなぁー
そんな考えが心を過る。
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