ずっとずっと 37
見るもの全てが色鮮やかで、美しく感じる。
しぃちゃんの笑顔と一緒に、使用人が用意した食事をとる。
君と食べる食事はなんて美味しいのだろう。昨日までの味気ない食事が嘘のようだ。
「しぃちゃんは本当に美味しそうに食べるね」
「えへへっ だってぇ 美味しいんだもん」
「薫もいつみても美味しそうに食べてるよ〜」
しぃちゃん、それは君と一緒だからだよ。
僕が普段食事をとるのは、それは生きるため、祖父母を悲しがらせないためなんだよ。
僕は君といると生きていている事が嬉しくてたまらないんだ。
父や母が僕を生かしてくれた事を、
神が僕を生きさせてくれた事にただただ感謝出来るんだ。
アペリティフの酔いが回って来たのか?
長旅の疲れのせいなのか?
デザートを食べ終えた後‥‥カウチに腰かけうつらうつらし始めたしぃちゃん。
「薫ーーー あたしもう限界ーーー眠いぃ‥…」
そんな事を呟きながら寝てしまったしぃちゃん。
暫く君の可愛い寝顔を堪能する。
君は僕の顔を美しいと言うけれど、僕は君ほど美しい人を知らない。
透き通るような真っ白の肌に、黒い大きな瞳。
くるくるとよく変わる表情。楽しそうに笑う口元。
君の全てが愛おしくてたまらない。
いつもの様に、君の寝室に連れて行こうと君を抱き上げた瞬間。
君の胸元が少しだけ、はだけた。
慌てて、君の胸元をあわせる。
刹那‥…
君の胸元に、赤く咲き誇る花びらのようなキスマークを見つける。
まるでそれは。己の存在を誇示する様に、自分の所有物だと見せつけるかのように
赤く咲き誇る花。
僕は‥…嫉妬の炎に包まれる。
嫉妬の炎は、君の胸元に唇に、そっと口づけをさせる。
君は、気づかない。この口づけも僕の思いも‥…
***
「しぃちゃん朝だよ。朝。」
「うーーーーーん。おはよぉー って、またカウチで寝ちゃってた?」
「うん。スヤスヤと気持ちよく」
「‥…あははっ、運んでくれたんだね。いつもゴメンね ありがとう」
「さっ、シャワー浴びておいで。その間に朝食を並べて貰うから。」
「はーーーい」
朝食を食べ終え、これからの準備をする為に君は、一旦自分の家に戻った。
途端に輝きを失う、このペントハウス。
日の光が燦々と届いている筈なのに‥…
輝きを失った部屋を見て、僕はこの先、君を失って生きていけるのだろうかと考える。
「薫ーー 開けて〜」
大きな荷物を持ち部屋に戻って来たしぃちゃん。
「ふぅーっ 疲れたーーー」
頭に浮かんだ考えをそのままぶつけていた。
「あのさ、しぃちゃん。もうあの部屋引き払ったらどうかな?」
「えっ?」
「殆ど帰らないし、ココに部屋なら一杯あるしさー。何かある度に荷物取りに行くの面倒じゃない?」
「そうなんだけど‥… ずっと一緒だと嫌じゃない?」
「一緒に居たくなければ居ない事も可能な部屋の広さはあるよ。それに、僕は嫌じゃないけど‥…しぃちゃんは嫌?」
「ううん。」ふるふると可愛く首をふるしぃちゃん。
「確かに勿体ないもんね。‥…そうして貰おうかな。」
「じゃぁ、勉強会に行ってる間に片付けておいて貰う様にしておくね。」
「‥…うん。ありがとう。」
君の愛する男があいつならば、僕はせめて君の帰る場所になりたい。
例えそれが束の間だとしても‥…
しぃちゃんの帰る場所は、僕の場所。
僕の場所は、 しぃちゃんの帰る場所。
僕は君を愛する
たとえそれが報われない思いだとしても
一方通行の愛だとしても、僕は君を愛する
僕は僕の光を失わない為に君を愛する。
それが君を少しずつ追いつめていたなんて‥…
君を愛してしまった事で君を苦しめてしまうなんて‥…
だけどごめん。
あの日あの時もし僕がそれを知ってたとしても君を愛する事は止められなかった。
だからごめん。
‥…僕の愛するしぃちゃん。
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