あいたい 中編 類つく
道明寺が迎えに来る約束の4年目に
「あと1年待ってくれ」
って言われて、ホッとした時かな?
ううん、違う。その時も、認めなかった。
認めたくなかったから。
だって司と類は、親友同士だから。
認めてしまったら、あたしは類を失ってしまうから。
類と過ごす時間は、穏やかで緩やかで‥失いたくなかったから
あたしは、認めなかった。自分の気持ちに気が付かない振りをした。
嬉しそうに道明寺が、あたしに連絡をくれる
「牧野、喜べ。4月には日本に帰れる。そしたら正式に婚約だ。」
後頭部を、ガッツーンと殴られた気がした。
あぁ、コレが、あたしが逃げてた結果だって。
一縷の望みの鉄の女‥楓社長も、歓迎してくれるって。
ははっ、笑うしかなかった。
今更、好きな人が出来ました。別れて下さい。そんな風に言えなかった。
ずるいよね。
あたしが、あんたを、道明寺を、幸せにする。なんて公言してたのにね。
あんたの大切な親友を愛しちゃいました。なんて言えるワケないよね。
あたしね、自信があったの。
自分は一途に道明寺を愛してる。この先もずっと愛せるって。
だけどね、本当は違ったの。
類、あなたが居てくれたからそう思ってただけだって、気が付いたの。
あたし... バカだよね。
目を瞑る‥ あの時の光景を思い出す。
類に、道明寺が帰って来ると告げた。
類は、一瞬の間をおいたあとに
「良かったね」
そう言って笑った。
あははっ、そうだよね。良かったんだよね?
良かったなんて思えないのに‥あたしは、類あんたに縋り付いて愛を乞いたいのに
あたしは類に祝福を受けた。
全部、自分が蒔いた種。仕方がないよね。
RRRR
「牧野です。お願いがあります。」
NYで知り合ったコスター会長にお願いして、あたしはナイロビに旅立った。
コスター会長にお願いして、あたしの消息を消してもらった。
道明寺があたしを捜す。
一ヶ月、三ヶ月、半年、一年と、あいつがあたしを捜す。
心が痛かった。ゴメンね道明寺。心の中で何度も謝った。
土星のネックレスと、手紙を送った。
元気でねサヨウナラ。今までありがとう。あたしは元気にしてる。道明寺も幸せになってね。
そう書いた。
あいつが、あたしを捜さなくなったと聞いた時は、すこし心が軽くなった。
ゴメンね。
日本を離れて6年。道明寺の結婚を知った。
心から祝福した。
あたしの心は軽くなった。
あれから何年経ったのだろう?
類、類は、どうしてる?
元気でいる?
幸せにしてる?
あいたい。類にあいたい。
薄情な奴。そう思ってるよね。
それとももう、あたしの事なんて忘れちゃった?
あいたい。あいたい。あいたい。
何度思った事だろう。
毎日、呪文のように唱えてしまう。
あいたい。あいたい。類にあいたい。
だけど、会えない。
あたしは、窓辺に腰掛け、外を眺める。
「つくし、ランチにいかない?」
サリーが声をかけてくる。
「OK」
外に出る。
青い青い空が広がる。熱い熱い風が吹く。
異国の空気が流れる。
この国に来て、10年近く経つのに、いまだに此処は、あたしにとっては異国の地だ。
♪♬♪♬
ねぇちゃん
生まれたよ。一度会いに来てよ。
進からのメールが届く。
***
10年ぶりに、日本に降り立った。
懐かしい風が吹いている。
「ただいま。」あたしは呟いた。
どーーーん ドッスン
「おっと」
「うぇーーーん」
「隼人! ダメでしょう! ご、ご、ごめんなさい。お怪我はなかったですか?」
「大丈夫ですよ。ボク、大丈夫だったかな?」
時が止まって、次の瞬間一気に動き出す。
「って、もしかして、もしかして‥つ、つ、つくしーーー」
あははっ、ドーンとぶつかってくるのは、親子でなんだね。
「滋さん、久しぶりだね」
「髪? 肌? えっえぇーーー でもでもつくしだーーー」
興奮して喋るのは相変わらずだね。
「ま、ママ〜 おともだちなの?」
ご主人かな? 滋さんが謝って、泣いてるのを見て、慌ててやってくる。
「息子がすみません。」
その言葉を合図のように
目を真っ赤にさせながら、あたしに抱きついてくる滋さん。
10年経つのに‥ありがとうね。すごく嬉しいよ。
日本の玄関口で、あたしは歓迎された気になった。
旅立ち間際の滋さんと、連絡先を交換して、日本にいる間に会う約束をして別れた。
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