明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

白線 21

月を眺めながら、思い出したくないあの日を思い出していた。

近年稀に見る大雪が降った日。雪に弱い東京は、全ての交通がストップした。
いつも通り、食事をして他愛無い話しをして別れる筈だった。だけど‥雪が降った。シンシンと‥
いいや、本当はあたし達2人とも、雪のことには気が付いていたんだ。見てみぬ振りをしてただけ。

積もりに積もった雪を見て
「帰れなくなちゃった。」そうポツリと類が呟いた時、あたしの心は歓喜に震えたんだもの。

雪の影響で停電した。真っ暗な中、寒いねと二人で寄り添った。
寄り添って、無言で口づけを交わした。
類が、好きだ愛してる。そう言ってあたしの頬を撫で、背に手を回した。
あたしは、回された手にしがみついた。

類の愛撫は全身であたしを愛してると語ってくれた。あたしの蕾は花開き、類に抱かれて初めて女としての喜びを知った。

女に生まれて良かった。そんな事を心底感じるセックスだった。全てがあたしの為に造られているんじゃないかと錯覚を起してしまう程に、類の身体はピタッとあたしにあった。

あたしは、自分でも驚く程に、類の身体を貪った。雪が止むまで、何度も何度も類の身体を貪った。

幸せだった。類が本当にあたしの一部になった。あたしが類の一部になった。幸せだった。

交通網が回復し、類が帰っていった後もあたしは幸せに包まれた。

双眼を瞑る。この先は思い出したくもない‥

あははっ、いつもそう‥あたしの幸せはあたしの掌からサラサラと零れていく。

類が、「結婚しよう。永遠につくしだけを愛してる」そう言って、紅く輝くダイヤをあたしの指に嵌めようとした。綺麗な綺麗な紅く透き通るダイヤ。
あたしは、慌てて手をひいたんだっけ。目の前に傷ついた顔をした類が、立ちすくんでいた。
思い出すたびに心が痛む。

「欲しかったなぁ~」あたしの口から言葉が漏れる
あの日、あの真っ赤なダイヤモンドが欲しかった。

月夜に手をかざして、目を開ける。月光に輝くのは、白い白い素肌だけ。

あたしは、小さく首をふり服を着る。
静寂の中、衣擦れの音だけが響いている。
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