明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

白線 23

yasuの部屋に向う。
暗闇があたしの泣きそうな顔を隠してくれるかな?そんな事を思いながら。

指紋認証をして、yasuの部屋に入る。
「シャワー浴びといで」yasuに言われて、熱い熱いシャワーで、全てを流す。情事の後も、気持ちも、涙も全てを流す。
ふわふわのタオルと、KID BLUEのインナーウェアが用意されている。
幸せな気分にしてくれそうな色合いに、思わず笑みが溢れる。
yasuの優しさを、心の底から感じる瞬間だ。
お風呂上がりのあたしを、カウチに腰掛けさせ、ドライヤーで髪を乾かしてくれる。優しく優しく。

ペライアのパルティータ第6番が流れている。美しくも哀しい曲を聴きながら、あたしの瞳から涙が流れる。

髪を乾かし終えたyasuが、あたしを後ろから抱きしめる。何度この手に慰撫されてきただろう。
何度も挫けそうになるあたしの心を、yasuは優しく受け止めてくれる。
「‥う‥っく‥うぅ‥ひっ‥ヒック‥」
yasuは、なにも言わずにあたしを抱きしめる。まるで宝物を抱きすくめるように。

抱きすくめられて、類を思う。なんでこんなにも哀しいのだろう。なんでこんな思いをし続けなければいけないのだろう。
新しい恋をしよう。彼の元から離れよう、そう思うたびに、引き戻されるこの思い。

その度に、自分に言い聞かせるように放った言葉
「類は、あちら側の人だから」
その言葉が、類をどれだけ傷つけているか、あたしは知っている。
だけど‥その言葉を放った自分が一番傷ついている。もしも類が、あたしと同じ世界を生きる人ならば、あたしは類の手をとって、未来に羽ばたいていけるのに‥

一緒に生きて欲しい。そう言えば、類は、迷わず全てを捨てて、あたしを選んでくれるだろう。だから、言えない。だから言わない。

yasuは、あたしのオアシスだ。何度も何度もyasuに助けられ、何度も何度も癒されてきた。
この人がいなければ、とっくのとうに心が壊れていたかもしれない。そう思う。

yasuの店も、yasuの部屋も、yasu自身のように温かくくるんとあたしを包みこんでくれる。
「yasu、大好き」あたしは、そう言う。嬉しそうに微笑んで、もう一度ギュッと抱きしめてくれる。
あたしは、繭に包まれた蚕のように、yasuの愛に包まれる。
いつかこの人に、報いる事が出来るのだろうか? yasuにそう問えば、行き倒れを助けてくれたのだけで充分。そう言って笑うだろう。たったそれだけの事で、yasuはあたしに掛け値の無い愛情を与えてくれる。
ううん違うのかもしれない‥あたしを愛する事で、あたしを抱きしめる事で、yasu自身も哀しみを癒している。
だって時折、yasuからどうしようもない哀しみを感じるから。あたし達は、もしかしたら、互いに慰撫し合っているのかもしれない。

「リリス、起きたら、みっちゃんと3人でご飯食べにいこう」夢の中で、yasuの声を聞いた。
「うん.」あたしは返事をして眠りに入る。夢も見ない程深い深い眠りに。yasuに抱(いだ)かれ眠りに入る。
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