白線 36
女は、美しく美しく笑って、そう言い捨てる。
「類、ドアを開けて頂戴。もうあたしを解放して」
解放?あんたはいつでも自由だった筈。それなのに何故? 俺は、何かを見落としているの?
「なんで?」
そんな陳腐なセリフを俺は吐く。
「ねぇ、昨日のパーティで類が履いていた靴の値段って知ってる?」
なんで、こんな時に靴の値段なんだ?怪訝な表情を浮かべる俺に
「知らないでしょ?ぁあはっ、そう言う事なの」
靴の値段を知らないのが、俺と別れる原因になぜなるの?
「つくし、ふざけないでくれ‥靴の値段と、俺と別れるのと、どういう関係があるかきちんと教えてくれ」
フッと小さく、女は笑う。
「類が履いていた靴ね、無理すればあたしだって手に入れられる。でもね、あたしが買うとしたら一生ものなの。大切に大切に履く靴なの」
朝陽に背を向けて,ニッコリとニッコリと女が笑う。
「だから、もうお終い」
覚悟を決めた女は、美しい。皮肉な程に美しい。
「ここから出さない」
「無理だよ」
そう笑った後に
「それとも、最後の思い出に、セックスに開け狂う?」
大きな瞳で、俺を見つめる。
女の唇が、俺の唇に触れる。両の手が俺を抱き締める。
「あたしを、愛しているなら、お願い‥もう自由にして‥」
あんたを手に入れたかった。俺の全てだから。あんたしか欲しくない。それなのに、愛しているなら自由にしてくれと、あんたは、懇願する。
つくしのスマホが鳴り響く。
「えぇ。勿論解っています。部屋の施錠を解除して下さい」
話し終えたつくしが、俺に向き直り
「最後に、教えてあげるね。あたしは、類坊ちゃんの性欲処理係だったの。もう契約解除なの。だから‥もうお別れ」
荷物を全て持ち、愛する女が部屋を出て行く。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥

♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥