ずっとずっと 39
TSUTSUIのセミナーに参加する為に、かおるちゃんと話し合い後期の授業は最低限の単位にする事にした。
「しぃちゃーーん お昼食べにいこう〜」
「うん。」
今日は学食ではなく、この頃噂の ワンコインランチ おばんざい に、昼食を食べにいく事にした。
RRRRR‥…
司からの電話だ。かおるちゃんに少し待っていてもらって電話にでる。
「おぉー元気か?」
「うん。元気だよ。今日は早く終わったの?」
「あん、移動の間。お前の声で元気づけて貰おうかと思ってよぉー」
「へっ? ぇへへっ」
「へっ って、何だよー色気ねぇよなぁー お前は何してるとこだよ」
「うん?これからかおるちゃんと おばんざい にお昼食べにいく所だよ。」
「弁当じゃないのかよ?珍しいなぁー」
「うふっふっ おばんざい なんとワンコインランチなんだよーー」
「あんだよ ワンコインって?」
遠距離恋愛の会話か?
なんて感じの話しをあーでもないこーでもないと話すあたし達。
「あぁー お前と話してると、疲れが吹っ飛ぶわぁーー」
嬉しい事を言う司。あたしも元気いっぱいになるよ。
「じゃっ、またかけるな」
愛する男との束の間の幸せな時間。
心の中が温かい気持ちでいっぱいになる。
「かおるちゃんお待たせーー」
「うふっ、誰から? もしかしてルゥさんから?」
「んっ?違うよぉー」
「えっ””そうなんだぁー なんか凄く幸せそうな表情してたから、てっきりルゥさんかと思ちゃった。」
「へっ??」
前から悠斗が歩いてくる。
「あっ、ユトくーん! しぃちゃんと おばんざい に行くけどユト君も行く?」
「おっ、丁度良かった。今お前等探してた所。これから爺様連中に顔見せだよ。顔見せ。おばんざいは今度今度」
「えぇーーーーー」
「多神楽だからいいだろうよー」
かおるちゃんと大きく2人で頷く。
おばんざい のワンコインランチも美味しいのだけど、多神楽の食事は絶品だもんねー。
「ルゥさんは?」
「薫は、筒井の爺様と話しがあるらしくって、直接行くってよ」
*****
「っん? 薫はいまなんて言ったのかな?」
「ですから‥… しぃちゃんが今まで使っていた部屋は解約して下さって結構です。とお伝えしてるのですが‥…」
「それは、どういう事なのかね? 解る様に説明してくれると嬉しいのだが‥…」
「しぃちゃんと2人、宝珠のペントハウスで暮らしているので、お爺様が借りていて下さった部屋は不要になりました。これで解りますか?」
「ほぉーーーーっ‥…」
「事後承諾で申し訳ないですが、六麓荘に行く前にバタバタと決まって、その後LUCYの仕事が入ったりしていたもので、報告が遅くなり申し訳ございません。」
「かまわん。かまわん。そーかーそーか。薫が他の者と暮らすなんて珍しい事もあるもんじゃ。」
「お爺さまは反対ですか?」
「いやいや、喜ばしいことじゃ。しぃちゃんとなら、儂だけじゃなく棗も亜矢さんも雪乃も大喜びじゃろうよー」
ご機嫌に笑う つぅ爺‥…
この時つぅ爺は、どんな花を将来咲かせるのか見てみたいと思い、自ら育てていきたいと思っている少女と、溺愛する孫の愛する女性が同一人物だと初めて知ったのだ。
つぅ爺は、愛する孫のため、己の欲求のため、 エゴと言う名の駒を一つ進める‥…
*****
錚々たるメンバーが多神楽に集う。
つぅ爺から
「この4人が、今年度予定されておる、TSUITUIセミナーの受講生じゃ‥…先に皆にも見て貰っておった、無記名書類の上位4名もこの者達じゃ」
「おぉーー今年は日本から4人も出るんじゃな」
「日本から4名とは儂等も鼻が高いのぉー」
「内2名が女性とは驚きじゃのぉ」
「そこのお二方は、神楽の坊に、新倉の娘か?」
「新倉の娘は、たしか神楽の坊の婚約者だったかのぉ?」
「祥子ちゃんは、流石じゃ」
「日本の経済界も安泰じゃ。儂等も楽しみが増えてまだまだ死ねんなぁ」
「薫君も共に語り合える仲間が出来て良かったのぉー」
「しぃちゃん、儂等は君にこの場で会えて本当に嬉しいよ」
皆が皆ご機嫌で、口々に賛辞の言葉を投げかける。
つぅ爺ズが可愛がってるKAGURAの祥子社長は、秘密裏で開催されているこのTSUTSUIセミナー初の女性受講生だった。
TSUTSUIセミナーには、将来を嘱望されている若者達が全世界から集う。
参加するには、確かな筋の紹介者の推薦が必要なのは勿論の事、本人の資質等が詳細に考査される。参加できたとしても能力のないものは容赦なく振り落される。受講生も10人前後とごくごく少人数で行われる。
数年に一度ないしは、該当者がいない場合はそれさえも行われないとあってか、TSUTSUIセミナーの卒業生達は世界を牽引していく選ばれし者達でもあった。また世界各国にいるセミナー卒業生の結束力は固いものでもあり、絶対のものでもあったのだ。
TSUTSUIセミナーのメンバーを率いるのが、筒井栄。
この男が黒と言えば,白いものも黒となるのだ。まやかしの黒ではなく、本物の黒になるのだ。
そして、この男が溺愛するジュエルの跡取りであり、LUCYの跡取りでもあるのが 宝珠薫 その人であった。
このセミナーに参加する事は、今後のビジネスにおいて、如何に重要で大切な事かをあたし以外の3名はよく知っていた。あたしは、社宅の交換条件にOKしたセミナーが、まさかこんなに重要な事だったなんて、全く知らなかった。
呆然とするあたしに薫が
「しぃちゃんは、しぃちゃんのままでいれば大丈夫だからね」
そっと囁き、手を握りしめてくれた。
薫に大丈夫だと言われれば、それだけであたしの気持ちは落ち着きを取り戻す。
紹介が終わり、和やかに食事が進む。
あんなに緊張したのが嘘の様に、美味しく楽しい食事であった。
かおるちゃんと2人「「うーん 美味しいねー」」の連発で、いつものようにワイワイ話しながら食事をとる。
その様子をみて、皆が口をそろえ、
「しぃちゃん、かおちゃんのおふた方は、ホンマに将来(さき)が楽しみなおなごはんですなぁー」
かおるちゃんとあたしは
「えへへっ‥…」 笑うしかないのであった。。
*****
あたし達4人が帰った後に
「薫君と、しぃちゃんは どういう関係になってはるんですか?いい感じに見えますがなぁ」
「あの2人は、ほんまにお似合いですなぁ」
「2人の婚約発表は受講後ですか?」
「薫君としぃちゃんなら我々皆が力になりますからな」
「筒井の家も益々繁栄の一路ですな」
等々と言った言葉が交わされていた。
つぅ爺は、ご機嫌に笑いながら
「しぃちゃんにはいつか、儂が後見人になって然るべき男の元に嫁がせようと思ってましてたらなぁー‥…薫はしぃちゃんが好きなようでしてなぁ。これも縁なのですかね。 嬉しい事に今日2人で一緒に暮らしとると、報告がありましたわぁ」
つぅ爺のこの一言で‥…
発表はされていないものの薫の婚約者として、あたしはありとあらゆる場所で扱われる様になるのだ。
そして
白いものを黒とする男への裏切りは、絶対に許されない‥…
それが例え、誤解から始まったものだとしても
あたしは底なし沼へ落ちていく‥…
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