白線 38
つくし、昨晩は来なかったけどどうした?
ご飯の材料買ってあるから、あとで作りによってよ
クスリと笑って返信する。
今行くから、ご飯研いで待ってて。
既読マークがついて、すぐに返信がくる。
えぇー すごい難問じゃんか。うーん頑張るぞー
じゃぁさぁ、じゃぁさぁ、里芋の煮物よろしく。
ニコニコマークまで、ついている。
yasuは、昨晩あたしが、行かなかった理由に気が付いている筈だ。
そうっと、寄り添ってくれる。
yasuがいて良かった。心からそう思う。いなかったら、きっとあたしは、立っていられない。
地下鉄に乗る。車窓に泣きじゃくったあとの女が映っている。
いただけないなぁと思う。泣いて可愛らしいのは、10代までだから。
だけど、今日だけ許して貰おう。沢山泣いて沢山愚痴ろう。
もう終わった恋だから、yasuに全てを話そう。
きっとyasuは黙って聞いて、頭をポンポンしてくれた後に、あたしをくるんと抱き締めて一緒に寝てくれるだろう。
地下鉄を降りる、yasuの家に向けて、あたしは歩く。
真っ直ぐに前を向いて。
ううん、真っ直ぐに前だけを向いて。
玄関ホールのソファーに、眼鏡姿のyasuが座っている。
麻色のVネックのニットを着て、珍しく眼鏡をかけて、英字新聞を読んでいる。
多くを語らない人だけど、時折ポツリポツリと自分の事を語ってくれる。
夢を見る時、日本語で見ないくらいの長い間、海外生活をしていたと聞いた。
日本に戻って、3年やっと半々で見るようになったよと言ってったっけ。
実を言うと、3年も一所に居たことがないんだと、言っていた。
リリスが気になるからかな?3年も日本に居ちゃったよ。そんな風に言って笑ってた。
yasuが、許してくれたらな一緒にどこかの国に行こうかな?
yasuの横顔を見つめる。綺麗な人だなーとしみじみ思う。
容姿もさる事ながら、何ものにも囚われない凛とした美しさを持っている。
視線に気が付いたyasuが、手を振りながら立ち上がる。
二人で、エレベーターに乗る。
yasuの肩にもたれかかる。yasuは、黙ってあたしを受け止めてくれる。
部屋に入ると、美味しそうな香りがする。
「唯一の自慢料理」
そう言って、サーブしてくれたのは、ポアロのスープと焼きたてパン。
温かいスープが、心に沁み入る。
後から、後から涙が出て来る。
「そんなに美味しい?」
優しく微笑んでyasuが聞いてくる。あたしは大きく頷く。
「ポアロのスープは、ママンの味だよ」
yasuが、そう言う。
トロトロに蕩けた、ポアロのスープは、優しい味がした。
食事を終えたあたしは、部屋着に着替えてyasuの側に、くるんとまる丸。
「ネコみたい」髪を優しく撫でながら、yasuが呟く。
ニャオーン 一声鳴いて、2人で笑った。
大丈夫、あたしはまだ笑える。
yasuが、優しくあたしを抱き締める。
fais dodo を唄ってくれる。
yasuの歌を聴きながら、あたしは深い深い眠りに落ちる
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