白線 39
お姉ちゃんが弟に唄ってあげる子守唄。
優しい調べの子守唄。類が教えてくれったけ。
そんなことを思いながら深い深い眠りつく。
嫌な事は思い出さずに、幸せな時を思い出して眠りにつく。
どれくらいの時間眠ったのだろう?
目覚めると窓辺から夕陽がさしていた。
書き物をしていたyasuと目が合う。
「おはようリリス」
「お仕事は?」
「うーん、今日は臨時休業」
いたずらっ子のように、yasuが笑って、里芋の煮物が食べたいと駄々を捏ねる。
あたしは、起き上がり里芋の皮を剥く。
真っ白で美味しそうな里芋だなぁーなんて考えながら。
好きなものが少ない類も、里芋好きだったんだよね。なんて事を考える。
胸がズキンッと痛いけど、前よりも類を身近に感じるのは何故だろう?
あぁそうか‥‥類の身体だけが目当てだと、無理して自分に言い聞かせなくていいからだ。
失うものなど恐れなくても良い今は、自分に嘘を吐かなくても良いんだ。
「出家でもしようかな‥」ポツリと呟いたら、yasuが「じゃぁ一緒に付き合ってあげようか」そんな言葉を返して来る。剃髪姿のお互いを思い浮かべ、二人で笑う。
お鍋の中で、コトコトコトコト里芋が笑ってる。美味しくなるよと笑っている。
そぼろ餡を作る。動物性タンパク質の嫌いな類に、食べさせるために良く作ったっけ。
出し巻き卵を作る。ちょっと甘めが類は好き。
鰯を焼く。うふふっママが出した時、すごくビックリしてたよね。
ひじきの炊いたのは、お出汁にお酒にお醤油。甘さは入れない。
ご飯はちょっと堅めが類は、好き。
デザートには苺。色が綺麗だから好きなんだ。そう言ってたよね。
料理を作りながら、涙を流す。類を思って涙を流す。
抱かれても抱かれても、次の瞬間に疼いていた身体は、もう疼かない。
代わりに、類が好きだと心が疼く。
土鍋のご飯の音がパチリと変わる。音が変わったら残り2分、火をかける。
蒸らし時間に、yasuと二人でテーブルセッティングする。
yasuの為に作った夕飯は、何だか類の好みのものばかりで、可笑しくなる。
yasuと向き合い、ご飯を食べる。美味しいねそう言い合いながら。
「いまのリリス位のときかなぁー」yasuが話す。
全てを捨てて出て来たと、「十字架」を背負って生きているとyasuが言う。
yasuがあたしを抱き締めて眠る時、時折感じた心の傷の片鱗を知る。
「それでも笑える」yasuが言う。
あたしは、yasuを抱き締める。
yasuがあたしの腕の中で,声を上げずに泣いている。
いつの間にか、太陽が沈んでいる。
夜は,全てを隠してくれる。
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