白線 44
「これからも、リリスって呼んでもいい?」
同時に言葉を発していた‥2人で大きく頷きあい‥‥笑い合う。
泣き笑いした顔は、目も鼻の頭も赤くて‥
それが可笑しいと2人で笑う。
「リリス‥ごめんね‥花沢がリリスを沢山沢山苦しめて‥」
yasuは、ちっとも悪くないのに‥yasuがあたしに、何度も何度も謝ってくる。
「yasu‥もう一回同じセリフを口にしたら、あたしは、yasuを百合亜おば様って呼ぶよ」
意地悪く笑って答える。
「百合亜は、許せるとしても‥おば様って‥‥リリスは意地悪だ」
唇を尖らせて、怒った振りをする。
「リリスの初恋は誰?」
yasuがあたしに聞いてくる。
あたしは、笑って
「あたしの初恋は、類。花沢類」
yasuが笑って
「私の初恋は、隼人。花沢隼人」
花沢に弱いんだねと2人で笑う。
私とリリスは、花沢に弱くて‥
類と私は、リリスにつくしに弱い‥のかな。
「隼人だけ仲間外れ。いい気味…」
今にも泣き出しそうな表情で、yasuが呟く。
今でも、花沢社長の事が好きなの?
聞いてみたいけど、そこまで踏み込んではいけない気がして‥
yasuを見つめた。
にっこり笑って
「うふふっ、隼人の事どう思っているかって? 最低な奴だと思うし、許せない、本気で憎んだけど‥」
言葉を切って、いったん目を瞑り、意を決したかのように
「それでも、愛してる。狂おしいほどに‥アイシテル」
yasuの目から、再び涙が落ちる。
母の涙ではなく、女の涙が‥
「私の存在は、花沢ではトップシークレットなの‥」
‥・そう言いながら、yasuが、語り出したのは、2年前、日本に来た理由。
愛する我が子を、愛する男を一目見たいと、日本にやって来たんだと言う。
「私‥リリスも知ってる通り、生活能力0なの‥」
「あははっ‥うん。でも今日はパン買いに行けたんでしょ?」
「あっ、うん。頑張った‥」
「上等、上等って‥ゴメン話しの腰おちゃったね」
普段は、一人で行動などしない‥いや、正確には出来ないyasuは‥
マネージャーと共に行動していたのだけど、
「ピッカーンって、晴れてたの。類が生まれた日の朝みたいに、空に雲一つなくてね‥」
お財布以外なにも持たず、誰にも行き先も告げずに、外に出たのだと言う。
「あの日、見た桜が見たかったの‥」
ホテルを出て、タクシーに乗った。
花沢の住所を告げ、屋敷を見に行ったまでは良かった。
屋敷の外からでも見える桜を堪能して、いざ帰ろうとしたら‥
タクシーは帰したあと‥ しかも‥お財布はない。
「って、なんでそうなるの?」
「あははっ、嘘みたいな話しなんだけど‥タクシーを降りた時に、長財布を落としたみたいで‥」
で、思い悩んでいても仕方ないから、歩いてホテルまで帰ろうと思ったらしい。
「車で、30分くらいだったから帰れるかなぁー?って‥」
だけど、そこは生活能力0のyasu‥‥
盛大に盛大に道に迷った。
日本に来て1週間の不眠と、食欲不振‥‥
「もうね、プチパニック‥歩いても歩いてもホテルにつかないし‥」
ピッカーンだった空が、夕焼け空になって、夜になって、夜になったら寒くって‥
ついでに雨まで降って来て‥
で、行き倒れそうだったのだと‥言う。
あたしは、類のマンションからの帰り道だった。冷たい心を抱えた帰り道だった
偶然、ううん‥‥多分必然‥ あたしとyasuは、出会った。
行き倒れそうになっていたyasuを抱え、自宅に連れて行った。
「起きた時、リリスが、天使に見えた」
目覚めたとき、いい匂いがして、あぁ、ついに天国なるものにきちゃった。そう思ったの‥
そうしたら、そこは、リリスのお家で、いい匂いは、私の為に作ってくれたご飯で‥
あんなに温かいご飯を食べたのは初めてだったの‥
私ね、リリスの為に出来る事は全部してあげるって、あの時決心したの
ビー玉色の美しい瞳を持ったyasuが、そう言って笑う。
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