白線 46
あの日を境に、俺の世界から、色も香りも美しい調べさえも消え去った。
一体いつまで、虚無の世界を、俺は彷徨い続けなければいけないのだろう。
一体いつまで、花沢の木偶人形として、踊り続けなくては行けないのだろうか?
死をも選べない自分は、この先何を支えに生きていけば良いのだろう‥‥
いつもそうだ‥幸せは、さらさらと音を立てて消えていく。
掌に掴んだと思った幸せは、指の隙間から、砂が落ちていくように、さらさらさらさらと音を立て消えていく‥
何も掴めやしない掌を見る。
ヴァイオリストになりたいと願った夢も‥
つくしを手にしたいと願った夢も‥
花沢が、俺の全ての邪魔をする。
捨て去りたいと願っても、どこまでも執拗に追い掛けてくる‥
そして奪って行くのだろう。俺の幸せを。つくしの自由を‥
俺が彼女を思う限り、花沢は、つくしを侮蔑し、つくしの大切なものや、幸せを奪って行くだろう。
どんなに、卑劣な手を使っても‥
エゴを通せるものなら、彼女の手を取り,共に生きていきたい。
だけど‥彼女を奪い共に逃げたとしても、待っているのは、破滅なのだろう。
そんな環境が耐えられないと、つくしが俺を見限ったら?
俺の心は、壊れてしまう。
人は言うだろう‥何も持っていない俺に対して,あいつは全てを持っていると‥
愛する女一人も守れない俺に対して‥
夜は明け、朝になる。昏い昏い朝が訪れる。
つくしのいない朝など、俺にはいらないのに‥朝は訪れる。
* **
一本の電話が鳴る。ファインマンの京極からの電話だ。
俺に別れを告げた、つくしは、翌週ファインマンを退職したらしい。
その日の夜、俺にアポをとってきた京極‥
会った瞬間、血相変えた京極に、「牧野さんをどこにやった?」って、殴り掛かられた。
ファインマンの御曹司、本気の恋だったらしい。
そんな短期間にか?って聞いたら、恋に期間は関係ないと言い切った。
京極は、お前とダメになった時に、一番近くにいて、落とすつもりだったんだ。そう言い放った。
同じ口で「お前、バカだよな、あんな良い女二度と会えないぞ」と
不思議な事に、それからの仲だ。
生存確認‥まさしくこの言葉が似合う感じに、時折、連絡が入って、酒を酌み交わす。
「牧野さんから連絡入ったか?」
「つくしの消息は何か掴めた?」
俺ら、二人の枕詞‥ 何度この言葉を交わしただろう。
つくしの消息は、ぷっつりと、そうぷっつりと消えた。
どこをどう探しても、何も出てこない。
京極に俺は聞く
「お前、つくしを捜し出してどうするの?」
「俺?っん‥嫁にでも貰おうかな」
「来ないと思うけど‥」
「そんな事は、わかんない。どうせ類は、つくしを奪えないだろう?」
不敵に笑う。
俺が、コイツを嫌いだと思う瞬間だ。
「だが、その前に俺の大事な親友の恋を応援してやる」
「って、俺‥お前の親友じゃないし‥」
「おっ、それは無いよな」
同じ女に恋した俺達は、2人で笑う。
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