白線 56
「隼人さん、なんだか緊張してきました」
言葉が、重なり2人で顔を見合わせ笑い合う。
「隼人さん、もう一度スマホ見せましょうか?」
「牧野さん、大丈夫です‥それより、類が花沢を辞める時に言った啖呵お教えしましょうか?」
「うーん、ここまで我慢したので、直接本人に聞きます」
類とyasu2人のいる場所に着くまでの時間、
あたしと隼人さんの胸は高鳴りっぱなしで、お互いに変な連帯意識が芽生えてくる。
目的地に車が着く間際‥
隼人さんが真面目な顔をして‥
「牧野さん、数々の失礼な言動‥本当に申し訳なかった。謝って済む事じゃない事は重々承知だけど‥‥」
「隼人さん、息子の嫁だって紹介してくれるんですよね?だったらもう良いです。その代わり、しっかり応援しといて下さいね」
もう一度笑い合い、健闘を祈り合う。
なのにだ‥なのに‥花沢社長たるもの、最後の最期で怖じ気付いている。
あたしは、隼人さんの手をひっぱり、車を降りてホテルの中を進む。
「手を繋いでるところを、類に見られたら‥怒られそうだなぁー」
「ぷっ、そう言って,逃げるつもりですか?ダメですよ」
「いやいや、流石にもう覚悟は、決まりましたよ‥」
妖しいものだと、チロリと見る‥
「ほ、ほ、本当ですよ‥」
慌てて返事をしてくる。
「牧野さんこそ、ドキドキされてるのはないですか?」
他愛も無い会話をしていると、いつの間にか、2人の居る部屋の前につく。
どっちがノックをするかで、小競り合う。
「俺は、敵地に一人向うんだから、ここは牧野さんでしょ」
「いやいや、ここは意表をついて、隼人さんで‥」
じゃぁ、ジャンケンでと言う事になって‥ジャンケンをしようとした瞬間‥
ガチャリッ‥
「あんた達、さっきから何ごちゃごちゃやってんの?」
ヒュゥーーーー 冷たい空気を纏った、
氷の王子が現れて、あたしの首根っこを掴まえてくる。
あたしと隼人さんが来たのと交代に‥
皆が一目散に退散しようとしているのが‥見て取れる。
みっちゃんとノエルちゃんは、もうドアの前。
「コホンッ ミシェルもミシェルの嫁も残って‥‥」
目敏い類は、横目で2人を見て声をかけている。
って、類、ノエルちゃんはまだミシェルの嫁じゃないよ。式は来月だよ。
「いま、それ関係ないから‥」
類の冷たい言葉が放たれる‥
あんまりにも緊張して、久々に独り言が出てしまったようだ。
居たたまれない空気が漂う中‥
全員が椅子に腰掛けるように、命が降りる。
京極さんと和也君を見ると‥二人して、片手を頭の上にあげて、ゴメンのポーズ‥
はぁっー 全部バレてるって事か。
yasuは? あれ?あれ? もう既に、隼人さんに見惚れてる状態だ。
隼人さんはと‥隣を見ると‥yasuを見つめている。
頼みの綱のパートン会長は、よおちゃんとラブラブモード突入中。
流石、大人の4人は、この冷たい空気には動じていないって事か‥
「うん、コホンッ」
類が、テーブルをコツンコツン叩きながら、咳払いを一つする。
大人の4人も、我に返り類の方を振り向く。
恐るべし、氷の貴公子だ‥
「で、どう言う事?」
どう言うも、こう言うも‥全部バレてる状況じゃないの??皆を見回す‥
うんうん、と頷いている。
「あははっ」
コツンコツンと、テーブルを指先で叩く音が響く‥
女は、度胸‥
あれ?まぁぁ細かい事はどうでも構わない‥
あたしは、息を吸って…
「類、結婚しよう」
飛っきりの笑顔で、プロポーズする。
類が、周りの空気が‥全てが‥止まる。
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