白線 58
「類は、どうするの?」
真っ直ぐな瞳で、そう聞かれた。
「っん?つくしと共に暮らす」
答えはシンプルだ。
好きな女と一緒の時を刻んで生きていく。それだけだ‥
「そっか、類は大人になったんだね。あぁーあ残念! もっと少年だった頃の類と話したかったなぁー」
泣き笑いの表情で、俺に言う。
刹那‥俺は思い出す‥
3人で手を繋いだ日々を。母さんと2人でピアノを連打した日々を。
テディと一緒に、子守唄で眠りについた日々を思い出す。
そうか‥俺、愛されてたんだ。
感傷に浸りたいのに、目の前の‥‥母さんは
「うーん、それにしても類って、隼人さんそっくりねぇー見れば見る程瓜二つ‥」
なんて事を盛んに言っては、
“あっ、リリィが隼人に惚れたらどうしよう~”
なんて、明後日の会話を繰り出している。
可笑しくなって、俺は笑う‥
ツボにハマって腹が捩れそうになる。
「笑い上戸まで似てるんだぁーへぇー仲悪いのに凄いね」
嬉しそうに、そんな事を言って来る。
仲悪いって‥‥
そりゃそうだけど、面と向かって言って来るあんたが元々の原因で、俺の母さんで、父さんの元嫁。だよね?
笑い声を聞きつけて、続きの間にいた皆が、部屋に戻って来る。
俺は、ニヤリと笑い‥‥一人一人に尋問する。
つくしと俺の事を何時知ったのか?
何時から隠していたのかを。
京極に至っては、あのそのしながら、吃ってる。
「ワリィ‥リリスに、絶対内緒だって‥」
「へぇーー、あんたは俺の事、親友とか言うけど‥、親友よりもやっぱり女をとるんだ‥」
いやいや‥そんなだの、なんだの‥必死に言い訳を繰り返してる。
本当は、笑いたいけど‥この状況が何となく愉快で‥
なんて、思ってたら‥
ドアの向こうで、つくしの声がする。
愛しい女の声がする。誰かと言い争い?
『‥‥隼人さんで‥』
『じゃぁ、ジャンケン』
隼人? ジャンケン? って、ジャンケンって何さ?
ガチャリッ‥
「あんた達、さっきから何ごちゃごちゃやってんの?」
重い沈黙が訪れる‥
つくし‥久しぶりにみる愛しい女‥
つくしを見れただけで、全てがどうでも良くなって、
大きな声で笑いたくなる。
一旦、笑ったら笑い続けてしまいそうで‥
「うん。コホンッ」
咳払いを一つして、テーブルをコツンコツンと叩く。
沈黙を破ったのは‥飛っきりの笑顔のつくしの言葉‥
「類、結婚しよう」
あははっ ははっ くっ ははっ
腹が捩れそうになるぐらいに、笑いが後から後からやって来る‥
って、何がどうなって‥この状況でプロポーズ?
つくしの顔をみたら‥
鼻の頭を掻きながら、一緒に笑い出す。
すげぇーすげぇー可愛くて
「うん、結婚しよ」
即答してた。
周りに、安堵が、幸せが広がっていく。
笑いに包まれる、つくしの一世一代のプロポーズ‥
俺、形無し?なんて思ったのなんて、束の間で‥
目の前にいる、愛する女が、俺と共に人生を歩んでくれるって考えたら‥
幸せで、幸せで、つくしを抱きかかえて、クルクル回ってた。
「類が壊れた‥」
和也が放った言葉‥
それを切っ掛けに、プッ、アハハッ、と皆が大笑いだ。
人生は、歓喜に満ちている。
一頻り、皆が笑った後に‥つくしが、母さんを振り向いて
「yasu‥ううん百合亜さんも、言わなくっちゃね」
「うん」
極上の笑顔で頷く、目の前の女性(ひと)
「隼人、好き、好き、大好き」
阿呆のように、口をあんぐり開けた父さん‥
「隼人さん‥先越されちゃったね」
つくしに、言われて、我にもどって慌てて、プロポーズをしていた‥
嘘のような本当の話‥

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