はじめてみよう 8
ロックと煙草の匂いに包まれている。
「おっ、アローンの出世頭!」
「こっちこっち」
茜さんの隣で手招きしているのは、茜さんの恋人で、アローンの北村専務。
2人の関係を知ったのは、偶然だった‥
口止め料代わりに、たまにアルズでご馳走になる。
「なんか、ご機嫌ななめ?」
酔っぱらいの茜さんが暢気に聞いてくる‥
いやいや、全ては‥茜さん‥
「うふふっ、牧野~、アズルでは仕事の話禁止だからね~」
ガハガハ笑ってる。
キタさんは、ニッコリ頷いて
「牧ちゃん、ここ座りなよ」
ソファーに腰かけると、キタさんが、スッと水割りを出して来る。
「ありがとうございます」
笑顔で受け取ると
「あっ、牧野、キタに色目つかったー」
やいのやいの五月蝿く騒いでる‥
「ハァッーーー、誰も使ってませんし、茜さんの大切な人に色目なんて怖くて使いませんよ」
ガハガハ笑って
「宜しい、宜しい」
ご機嫌に頷きながら、北さんに凭れ掛かる
完全無欠な茜代表に憧れるけど、
目の間にいる、ただの酔っぱらい女に成り下がった、茜さんも大好きだ。
まぁ、ただの酔っぱらい女なんて言ったら、説教もんだろうけど‥‥
キタさんこと、北村専務が、茜さんを見守る眼差しは、愛情に溢れている。
2人にしか解らない、色々な事があったのだろう‥‥
いやいや、そうじゃなくて、ここは、ガッツーンと一発、文句を伝えよう。
そう勢い込んだ次の瞬間
「HANAはどう?大変?あんまり嫌だったら蹴ってもいいからね」
「‥‥蹴ったら、アローン大変になりますよね?」
「まぁね。まぁ、そん時は、牧野が他の仕事とってきてよ」
ガハガハ笑う。
「でもね、HANAの仕事は、牧野を大きく成長させてくれると思うんだぁよね」
そんな風に、言われたら‥喉元まで出かかっていた文句も言えなくなって
「半年、死にもの狂いで頑張ります。ボーナス弾んで下さいね」
改めて、そう返事していた。
茜さんがニッコリ笑って
「それでこそ牧野、アローンも安泰だね。ねっキタくん」
キタさんに凭れかかりながら、グラスを煽る。
あっ、ヤラレタって思ったけど、半分は本気なんだろう。
そんなに嫌なら蹴って来い。
だけど自分の糧にするために、しっかり働いてからって事だよね。
「でさ、花沢社長と、牧野ってどういう関係?」
キタさんに、凭れ掛かりながら、
酔っぱらいお女が、ニコニコ笑って聞いてくる。
「えっ、か、か、関係って‥」
「花沢社長の目、見てたら解るよ‥牧野と何かあるんだななって」
って、茜さん‥ 会食のとき、そんなこと一言も言ってなかったじゃん。
恐るべし‥アローン代表‥
心の声が聞こえたのか?
「田所達の事気が付かない、あんぽんたん牧野じゃ一生無理だと思うけどね」
ククッ笑ってる。
そのあんぽんたん牧野に、バレちゃったのは‥何なんだろう?
なんて、お酒の良いが回ってきた頭で考えていたら‥
「で、牧野は、花沢社長の事どう思ってるの?」
なんて事を聞いてくる。
流石‥スッポン茜代表だ。
本当にこの人ばかりは侮れん。

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